ホノルル研修旅行その1
当院のスタッフのある者たちは、勤続10年前後に達する者がいます。
それで先日はそんなスタッフに感謝の思いと、さらなる成長を願って海外研修の機会を設け、出かけてきました。
(そういうわけで休み中に病院に来られた方々には、御迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。)
さて小雨模様の出発当日、マル子が言いました。
「私、雨女なんです。きっと、雨ばかりかもしれません。」
「ほー、マル子は雨女か、それは困るなあ・・・」
笑いながら大きなトランクを提げ、地下鉄に乗ったのです。
ところが福岡空港に着いてカウンターで成田への搭乗手続きを終わった直後、係りの人が走って追いかけて来て言いました。
「すみません、お客さん。成田の空模様が悪くて、さっき手続きした便では、もし出発しても着陸できずに福岡に戻ってくる可能性が出てきました。
出発を早めて、今から出る便に変更されたら、羽田になら着陸できる可能性が高くはなりますが・・・」
「え! そうなんですか・・・、困ったなあ。羽田からバスで成田まで行かないといけないし・・・。でも、仕方ない。じゃあ、その便に変更してください。でも、あと十五分しかないのに、乗れるのですか?」
「乗れるようにします。」
まったく思いがけず、最初からつまづいてしまった。なんとか成田に行かないと、ホノルルへ予約した便に乗れません。(福岡からホノルル直行便は、その時はなかったのです。)
「急げ、急げ、」
4人でバタバタしながらいつもは通ったことのない、カウンターの内側の通路に案内され、小さな保安所を通り抜ける。いや、通り抜けたと思ったのだが、誰かが引き止められていた。
「誰だ? 何で止められたんだ?」
「マル子です。バッグにカッターナイフが入ってたみたいです。」
カメ子が呆れたように言う。
「まったく、そんな物、普通、持ち込まないだろう。何でバッグに入れてるんだよ、この急いでいる時に、」
「だって、荷造りの紐を切らないといけない時、使おうと思って・・・」
「スーツケースに入れとけば良かったのに・・・、もう、カッターなんか廃棄したら?」
「いえ、これは人からもらった記念の大切なカッターナイフだから。」
一歩も譲らないマル子。仕方がないので、それを保安所に預かり手続きしてもらい、封筒に名前と住所、便名を記載し、また4人駆け出す。
と、次のドアを開けたら、急に搭乗ゲートのすぐ近くに出ていた。
「わあ! もうここに出た! すごい近い、抜け道だ!」
どうやら特別の近道を利用させていただいたようです。
そういうわけで、予定変更で早い羽田行きに乗り換えたのですが、登場口でまたマル子にストップがかかりました。
「お客様、ちょっとお待ちください。申し訳ありませんが、お預かりしたスーツケースの名札がはずれて、多分マル子様の荷物だと思われるのですが、それを確認していただけますか?」
「なんだ、なんだ? どうした?」
「またマル子がトラブッています。」
「えっ? また、マル子か。」
こうして大きな黒いスーツケースが搭乗ゲートまで運ばれて来るまで待つことになります。
「はい、これです。間違いありません。」
マル子は神妙に荷物の確認を終え、4人は機内に乗り込む。
ところが無事出発したはいいが、この日は確かに天候は悪かったようです。
途中から機体はまるで山道を走るバスのように揺れ、しかも羽田についても数十分間上空を旋回し続け、着陸許可を待たねばならなかったようです。
ガタガタと揺れ続ける機中で私は気分が悪くなった。窓の外は夜の闇が包み、しかも雲の真っ只中で、街の明かりは全く見えない。
このまま4人が死んだら動物病院はどうなるのだろう。
新人で今回の研修には希望性のため参加をしなかったタマエが、さっそく病院を「タマエのペットホテル」とかなんとかに、作りかえるかも知れないなあ・・・。
カメ子やマル子達は今、(こんな旅行で死にたくない)と、自分の席で不安に陥っているだろうか?などと、考える。
隣席の妻はどうかと、ひそかに気配を窺うと、どうも悠々と寝ているようだが・・・。
(着陸まだかなあ、長いなあ・・・)
いよいよ降参したくなる頃、しかし飛行機はようやく滑走路に機首を向けるのでした。
ブルブル・・・ガタガタ・・・
翼が震え、車輪が音をたてて接地する。
この強風の中を、さすがにパイロットは無事に着地してくれたのです。
大勢の命を預かっているパイロットはすごい!
しかし、ホッとしたのもつかの間、これから荷物を受け取ると私たちは成田に向けて、さらに急がなければなりません。
それで先日はそんなスタッフに感謝の思いと、さらなる成長を願って海外研修の機会を設け、出かけてきました。
(そういうわけで休み中に病院に来られた方々には、御迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。)
さて小雨模様の出発当日、マル子が言いました。
「私、雨女なんです。きっと、雨ばかりかもしれません。」
「ほー、マル子は雨女か、それは困るなあ・・・」
笑いながら大きなトランクを提げ、地下鉄に乗ったのです。
ところが福岡空港に着いてカウンターで成田への搭乗手続きを終わった直後、係りの人が走って追いかけて来て言いました。
「すみません、お客さん。成田の空模様が悪くて、さっき手続きした便では、もし出発しても着陸できずに福岡に戻ってくる可能性が出てきました。
出発を早めて、今から出る便に変更されたら、羽田になら着陸できる可能性が高くはなりますが・・・」
「え! そうなんですか・・・、困ったなあ。羽田からバスで成田まで行かないといけないし・・・。でも、仕方ない。じゃあ、その便に変更してください。でも、あと十五分しかないのに、乗れるのですか?」
「乗れるようにします。」
まったく思いがけず、最初からつまづいてしまった。なんとか成田に行かないと、ホノルルへ予約した便に乗れません。(福岡からホノルル直行便は、その時はなかったのです。)
「急げ、急げ、」
4人でバタバタしながらいつもは通ったことのない、カウンターの内側の通路に案内され、小さな保安所を通り抜ける。いや、通り抜けたと思ったのだが、誰かが引き止められていた。
「誰だ? 何で止められたんだ?」
「マル子です。バッグにカッターナイフが入ってたみたいです。」
カメ子が呆れたように言う。
「まったく、そんな物、普通、持ち込まないだろう。何でバッグに入れてるんだよ、この急いでいる時に、」
「だって、荷造りの紐を切らないといけない時、使おうと思って・・・」
「スーツケースに入れとけば良かったのに・・・、もう、カッターなんか廃棄したら?」
「いえ、これは人からもらった記念の大切なカッターナイフだから。」
一歩も譲らないマル子。仕方がないので、それを保安所に預かり手続きしてもらい、封筒に名前と住所、便名を記載し、また4人駆け出す。
と、次のドアを開けたら、急に搭乗ゲートのすぐ近くに出ていた。
「わあ! もうここに出た! すごい近い、抜け道だ!」
どうやら特別の近道を利用させていただいたようです。
そういうわけで、予定変更で早い羽田行きに乗り換えたのですが、登場口でまたマル子にストップがかかりました。
「お客様、ちょっとお待ちください。申し訳ありませんが、お預かりしたスーツケースの名札がはずれて、多分マル子様の荷物だと思われるのですが、それを確認していただけますか?」
「なんだ、なんだ? どうした?」
「またマル子がトラブッています。」
「えっ? また、マル子か。」
こうして大きな黒いスーツケースが搭乗ゲートまで運ばれて来るまで待つことになります。
「はい、これです。間違いありません。」
マル子は神妙に荷物の確認を終え、4人は機内に乗り込む。
ところが無事出発したはいいが、この日は確かに天候は悪かったようです。
途中から機体はまるで山道を走るバスのように揺れ、しかも羽田についても数十分間上空を旋回し続け、着陸許可を待たねばならなかったようです。
ガタガタと揺れ続ける機中で私は気分が悪くなった。窓の外は夜の闇が包み、しかも雲の真っ只中で、街の明かりは全く見えない。
このまま4人が死んだら動物病院はどうなるのだろう。
新人で今回の研修には希望性のため参加をしなかったタマエが、さっそく病院を「タマエのペットホテル」とかなんとかに、作りかえるかも知れないなあ・・・。
カメ子やマル子達は今、(こんな旅行で死にたくない)と、自分の席で不安に陥っているだろうか?などと、考える。
隣席の妻はどうかと、ひそかに気配を窺うと、どうも悠々と寝ているようだが・・・。
(着陸まだかなあ、長いなあ・・・)
いよいよ降参したくなる頃、しかし飛行機はようやく滑走路に機首を向けるのでした。
ブルブル・・・ガタガタ・・・
翼が震え、車輪が音をたてて接地する。
この強風の中を、さすがにパイロットは無事に着地してくれたのです。
大勢の命を預かっているパイロットはすごい!
しかし、ホッとしたのもつかの間、これから荷物を受け取ると私たちは成田に向けて、さらに急がなければなりません。
2011-12-01 15:00
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