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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

信号待ちで

「ドカーン!」

マダムNが赤信号で停車していた時です。突然大きな爆発音のような音が後ろから聞こえました。本能的にルームミラーで後方を見ます。

(後ろで、追突事故をやったのかしら!)

そう思った瞬間また「ドカーン!」の音、そしてマダムの真後ろの車がぐぐぐっと近づいて来るのがわかりました。

(わっ! 来る!)

一瞬のことでした。身体が固くなり、とにかくブレーキを踏ん張り、ハンドルを握り締めます。

「ドカーン!」

今度は自分の車が大きな衝撃音を発して前に押し出されます。

(わあっ! 何これ!)

ペダルも折れよとばかりにブレーキを踏みつけて、踏みつけて、止まれ!と念じますが、キキキッとタイヤが地面をこすりながら車は前に突き出されます。

(ああっ、ぶつかる!)

覚悟をした瞬間、しかしマダムの車は、前方の車両にぶつかる直前でなんとか止まってくれました。

4台の車を巻き込んでの、玉突き事故です。

脇見運転でしょうか。交差点で停車中の車列に、ブレーキを踏まないまま、小型のトラックが突っ込んできたようです。

一台目に追突し、それが押し出されて二台目に追突し、さらにそれが押し出されてマダムの車に追突してしまったのです。

「まったくひどい目にあったわ。大きな怪我はしなかったけど、一応病院に行ってみてもらいましたよ。あれから膝が痛むの。

私のすぐ後ろの車の女の子は、新車を買ってまだ一か月しかたたないのに、前も後ろも潰れてしまったって、嘆いてたわ。体調も壊して一週間ぐらい入院したみたい。

それでね、私の車が動かなくなったの。だけど保険会社は古い車だから40万円くらいの補償しか出せないだって。

どう思います?それなら、修理してくださいと言いましたよ。
だって、それじゃあ、車買えないしね。」

マダムはあっけらかんと言われましたが、一歩間違えば死者も出るところでした。それぐらいの事ですんで幸いだったと思います。

私も追突されたことが何度かありますが、車内に響く衝撃音は何かの爆発と間違うくらい、大きな音がします。

自分が気をつけてても、向こうから突っ込んできたら、どうしようもありません。

重いフードを持って、一緒に車まで運ぶと、すでに修理の終わったマダムの車には、愛犬がゆったり座っていました。

本当に重大事故にならなくて、幸いでした。

どうぞ、皆様もお気をつけください。
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きれいに食べましょう

「先生、かけらが飛んでますよ!」

お茶の時間でした。餅吉の煎餅をかじっていると、割れた小片がポロポロと落ちてしまった。それを見逃さず、カメ子が指弾する。

三人のスタッフが皆いっせいに私の口を見、そして足元に散らかる煎餅屑を見た。

(むむむ、見られたか・・・)

「ありゃりゃ、そうなんだよ。どうも最近、食べ方が下手になったなあ・・・なんて。
昔はお年寄りの食べ散らすのを見ていて、(あらあら・・・)なんて思っていたけど、なんの、最近は自分がよく食べこぼしているよ。

いや、それが食べこぼしだけじゃないんだ、物を適正な力で掴む判断力も落ちてるみたい。
コーヒーカップでも、味噌汁でも、つるりと滑らないように持つために、いちいち力加減を考えて持たないと取り落としそうになるんだよ。

若い頃はそんなこと考えやしないよ。無造作に持ってたもんだけどね。」

「あ、私もそうなんです。時々握っているものを、落としそうになるんです。」

カメ子が同意する。

「あるある、私も最近は、そんな気がする。」

マル子もケラケラ笑いながら賛同。

そんな三人をよそに、ただ一人、若いタマエだけがキョトンとしている。

(ふーん、良かった。僕だけじゃないのか・・・)

話しが盛り上がってなんだか安心した時、ぽつんとカメ子が言った。

「でも嫌ですね。こんなことで、先生と話題が合う自分になったのかと思うと・・・。」
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中学校の先生からの電話

クリスマスも近くなったある日のことです。近所の中学校の先生から電話がありました。

「あの、実はうちの生徒が子猫を保護したと言うちるんですが、どうしたらいいか連れて行く先もなくて、それで・・・、申し訳ないんですが、そちらで飼主さんを見つけてもらうわけにはいかないでしょうか?」

丁寧な物腰で話される男の先生です。話し振りからいかにも困っている様子が窺えました。昔、うちの子供たちもお世話になった学校であり、どうぞ連れて来てくださいとお答えしました。

さて、連れて来られたのは生後2か月くらいでしょうか、みごとにボロボロになった子猫でした。

「すみません、この猫なんですが・・・」

セーラー服の中学生が抱っこした子猫を指しながら、先生が言われる。

(うわあ、これはまた、相当悲惨な生活に落ち込んでたみたいだなあ・・・)

長毛種ですが体中が傷だらけで、皮膚病を掻き破ったような病変に覆われ、尻尾まで赤剥けています。片目もおかしい。

ふと中学生の女の子を見ると、数ヶ月前自宅の老齢猫の最期を看取って、ワンワン泣いていた女の子でした。

「あら、君だったの。そうか、君が連れて来たのか・・・。」

彼女は、どこかでこのボロボロの子猫を見つけ、何とか助けたいと思って、先生に頼み込んだのでしょうか?

それにしても中学校の先生は偉いなあと思いました。
学科準備や部活などの指導、それにPTAなど忙しいのに、生徒が拾って抱きしめている子猫を、見て見ぬ振りしません。

「捨ててきなさい、学校に連れて来ちゃいかん。」

「いやあ、僕もどうしようもないぞ。持ってかえって親に相談しなさい。」

と、関わりを避けて普通なのに、動物病院に電話して、生徒と一緒にわざわざお願いに来られるんですから。

きっと、一人の生徒の心を見つめ、それを大事にしてくれる先生なのでしょう。

さて、引き受けたはいいのですが、その子猫は検査でいろいろ持病、感染症が見つかり、回復は遅れています。あれから40日たっても、今だ治療中の身。

早く完治しますように。
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謎の三角

当院に隣接して、農業用水路がある。コンクリで蓋をされているので暗渠になっているが、平坦な道が出来、北側は昔からフェンスがあって行き止まりになっている。

当院と接している長さは30mほどもある。
但し幅は2m程度の、とても細長い範囲です。
それでも犬の運動場に丁度良いため、毎日利用させてもらっている。

夏は隣の施設の緑豊かな生垣に、クマゼミがわんさかと来て賑やかに歌ってくれる。

秋は可愛いドングリも落ちてくるが、これは食べられないらしい。

冬は用水路から散歩中に、向かいの和菓子屋さんが正月用の餅を準備するのが見える。搗き立てのもちが店頭に並ぶ。美味しいと評判の店なので時々イチゴ大福など買っている。

そういうわけで、この運動場はスタッフも毎日歩くのだが、ある日カメ子がこんなことを言い出した。

「先生、先生、大変です!用水路に変なものがあります!」

「えっ? 変なもの?」

「はい、いつのまにか、赤い色で三角の模様が描かれたものがあるんです。真ん中が白く塗られています。そして中心に釘があります。

先生、これはきっと、何かの呪いではないでしょうか?」

「え!? 何かの呪い!」

「はい、これはもしかしたら、誰かがこの近くの何かを呪っているのではないでしょうか? そうだ、もしかしたら、うちの病院かも知れませんよ!」

「ええっ! うちの病院が呪われてるかもしれない!?」

「はい、急に置かれていて、これは怪しいですよ!」

「どこだ、どこにあるんだ!」

すぐにカメ子の案内で、用水路を見に行く。

すると、確かに用水路の中央付近、コンクリートの蓋の真ん中に赤い色で三角が描かれ、白い色に釘が打たれていた。

「おいカメ子、これは、しのしるしだ。」

「えっ、やっぱり死のしるし!ですか・・・」

「違う、福岡市の地籍調査係か何かが、打っていった測量の跡だ。」
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美人シャム子ネコ

「あれ、何だ、この子猫は?」

それはようやく夏の暑さが遠のいてきた、9月のある昼でした。猫舎に見慣れないシャムネコの赤ちゃんが入っていました。

「あ、それは、マル子が出勤の途中に拾ってきたみたいです。見過ごしにするのは忍びないと思って、連れて来たみたいで・・・。」

タマエが言う。

「うーん、拾ってきたか・・・」

こりゃ世話が大変だぞと思ったが、動物病院の獣医の立場としては、マル子を叱るわけにもいかない。いや、よくぞ助けてあげたと褒めてやってもいいくらいである。

しかし現実は大変だ。一日中オシッコやウンチや離乳食やそういったのを世話してあげなければいけないし。

しかしその子猫は実に可愛かった。丸顔で洋風で青い目で、こんな美人はめったにいない。まあ、いいだろう。きっとすぐもらわれるだろう・・・そう思ったが、それは大きな間違いだった。

離乳食が終わり、普通の子猫となってやんちゃな時期を迎えると、まあその性格の悪いこと、凶暴で過激の一言に尽きます。

普通なら三、四日で慣れるのですが、この美人はいつまでたってもシャーシャー怒り、咬みついて来る。
手間がかかって大変です。

「おい、おい、マル子、この子猫は、大丈夫かな?」

「はい、大丈夫と思うんですが・・・」

頼りない返事をする。

里親捜しにデビューしたが、来院する飼い主さんたちに注目され、可愛がられても、もらっていく人は現われません。

いえ、実は途中一回、ある女性に引き取られて行ったのですが、翌日、「この子は飼えません。」と、帰ってきたのでした。

戻ってきた子猫に向かい諭します。

「おまえなあ、チャンスはすくないんだから、もらわれたらおとなしくしないと、いけないんだぞ。」

さて月日はたち、秋が深まり冬になります。やがてクリスマスを過ごし年の暮れを迎え、そして新年となりました。

幼い子猫から、病院暮らしが四ヶ月近くなり、しなやかな若猫になりつつありました。

(うーむ、このままではいかん。どんどん大きくなりよる。)

と、初春のお慶びを申し上げながらも、子猫の心配をしていたら、ある日突然、「この子猫が欲しい!」という家族連れが来てくれて、めでたくもらわれていきました。

「おい、おとなしくしてるんだぞ。たのむぞ。」

一抹の不安を抱きながら、みんなで見送りました。

「すごく美形だったから大丈夫、すぐもらわれると思って拾って来たんですけど、やっぱり猫も、可愛いからと言ってすぐもらわれるとは限らないんですね。・・・」

私の隣で猫を見送りながら、マル子がしみじみ言う。

マル子、君は一体何を言いたいのだ!?
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野ウサギ

「おや、このウサギは、あの時の赤ちゃんウサギですか?」

灰褐色のそのウサギをみた途端、私は夏の公園の出来事を思い出したのです。

「フフフ・・・、はい、そうです、あの時のウサギです。」

夏の暑い盛り、南区の公園の広場の草刈をしていたマダムが、エンジン付き草刈機で雑草を刈り込んでいたとき、突然目の前にうずくまる赤ちゃんウサギを発見したのでした。

「あら、どうしてこんなグランドに、一羽でいるの?」

片方の手の平に乗るくらい小さな生き物、生まれて間もないフワッとした命でした。

飼いウサギが産んだのを誰かが捨てたのか? それとも野生のウサギか?

奇妙な場所で発見された唐突な出来事だっただけに、ウサギの由来がその時はわかりませんでした。

しかしあれから5ヶ月、赤ん坊ウサギは成長し、スリムな体に見たこともないような長い足、短い耳、どうやら本当の野うさぎだったようです。

足を伸ばした時の長さと細さは、特別でした。それはカンガルーやワラビーの足を連想するようなほっそりした力強さです。

「ふーん、やっぱり野生種でしたか・・・。マダム、それではあまりなつかず、気が荒いでしょ?」

「いいえ、おとなしくて、良い子ですよ。どっちかというと、前から家にいる飼いウサギの方が、気が荒いくらいです。」

「へー、そうなんですか。なついてくれたんですね。」

まだ若いから安心するのは時期尚早かもしれませんが、もしかしたらこのまま普通に飼育が出来るのかもしれません。

これからどう育っていくか、楽しみです。

それにしても、振り返れば昔は、多分わずか50年ほど前は、福岡市内いたるところで野生ウサギが走り回り、タヌキも出没していたでしょう。

「ウサギ 追いし かの山、小鮒 釣りし かの川」
は、普通の風景だったはずです。

そう言ったものを全部ブルドーザーで潰して、山すそまで家を建て、道を広げ、地下鉄を伸ばしてきました。

野ウサギと近代都市が共生出来るような街創りを提案できる、そんな力量の都市デザイナーは、一人ぐらい居られないものでしょうか?
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新年おめでとうございます

えー
病院猫の畏咲(いさく)でございます。
皆様、明けましておめでとうございます。

速いもので、おいらも病院を任されてから三回目の正月を迎えました。
でも何回迎えても、正月はいいもんですね。

なにしろただで、気分がまっさらに、新しく成れるんですからね。

正月当番に出てきてる看護士連中も、なんだか嬉しそうな顔して、ケージの掃除をしてましたよ。鼻歌なんか歌ってね。

マル子は歯ブラシを取り出して、猫舎のケージの片隅やネジの間の汚れ滓なんかも擦り落として、いつにもまして丁寧に掃除してくれました。えらいもんですね。

ただ、よく見るとあれはいつも院長が昼休み歯を磨く時の歯ブラシだったと思うんです。
おいらとしては、もっときれいなやつで磨いて欲しかったんですが。

カメ子も病院中を綺麗にしてくれてましたが、終始えらくニヤニヤしてましたね。あれはきっと、心はもう郷里に飛んで、うまいもの腹いっぱい喰って、呑んでる自分を想像してたんだと思います。

え?タマエですか?
タマエは大晦日の仕事が終了した途端カウントダウンに出かけ、その後はもう野に放たれた狼のように、目の前に出された物を手当たり次第食いついていましたから、幸せな正月を過ごしたのは間違いありません。
消息は不明ですが、今週中には戻ってくると思います。

人は、悲しいことも辛いことも飲み込みながら、ユーモアを持って明るく成長していくよう造られています。

今年も皆様の行く手に勇気と優しさが溢れますようにお祈り申し上げます。

                       2012.正月

                 院長代理 病院猫 畏咲
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