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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

野ウサギ

「おや、このウサギは、あの時の赤ちゃんウサギですか?」

灰褐色のそのウサギをみた途端、私は夏の公園の出来事を思い出したのです。

「フフフ・・・、はい、そうです、あの時のウサギです。」

夏の暑い盛り、南区の公園の広場の草刈をしていたマダムが、エンジン付き草刈機で雑草を刈り込んでいたとき、突然目の前にうずくまる赤ちゃんウサギを発見したのでした。

「あら、どうしてこんなグランドに、一羽でいるの?」

片方の手の平に乗るくらい小さな生き物、生まれて間もないフワッとした命でした。

飼いウサギが産んだのを誰かが捨てたのか? それとも野生のウサギか?

奇妙な場所で発見された唐突な出来事だっただけに、ウサギの由来がその時はわかりませんでした。

しかしあれから5ヶ月、赤ん坊ウサギは成長し、スリムな体に見たこともないような長い足、短い耳、どうやら本当の野うさぎだったようです。

足を伸ばした時の長さと細さは、特別でした。それはカンガルーやワラビーの足を連想するようなほっそりした力強さです。

「ふーん、やっぱり野生種でしたか・・・。マダム、それではあまりなつかず、気が荒いでしょ?」

「いいえ、おとなしくて、良い子ですよ。どっちかというと、前から家にいる飼いウサギの方が、気が荒いくらいです。」

「へー、そうなんですか。なついてくれたんですね。」

まだ若いから安心するのは時期尚早かもしれませんが、もしかしたらこのまま普通に飼育が出来るのかもしれません。

これからどう育っていくか、楽しみです。

それにしても、振り返れば昔は、多分わずか50年ほど前は、福岡市内いたるところで野生ウサギが走り回り、タヌキも出没していたでしょう。

「ウサギ 追いし かの山、小鮒 釣りし かの川」
は、普通の風景だったはずです。

そう言ったものを全部ブルドーザーで潰して、山すそまで家を建て、道を広げ、地下鉄を伸ばしてきました。

野ウサギと近代都市が共生出来るような街創りを提案できる、そんな力量の都市デザイナーは、一人ぐらい居られないものでしょうか?
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