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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

お母さんとシャンプー

「良かったねえ、レイ君、綺麗になるよ!」

マダムHがレイ君に語りかけます。ソフトバンクのお父さん犬に良く似た、白い中型犬のレイ君が、シャンプーにやってきました。

今年12歳、もう若くはありませんが、足取りはしっかりしています。

ちょうど換毛の時期で、抜けかけた毛で体中ぼそぼそになっています。シャンプーが嫌いなので、軽く鎮静をかけて、マダムにも付き添ってもらって、ブラッシングを始めました。

「フフフ・・・もらってきた時は、小さかったたけどねえ。」

「レイ君は、どこから、もらって来られたんですか?」

「西部の動物管理センターなの。」

「えー、それはラッキーだったねえ、レイ君、危機一髪だったわよ。」

「フフ・・・小さくて可愛かったから、この子を欲しいと思う人があの日たくさん居てね。くじ引きだったの。

順番は私が一番に引いたんだけど、ハズレでね、

『あー、やっぱり、くじ運悪かったわ!−』

って、とっても大声で叫んじゃった。

ところがね、子犬を引き当てたのは、小さなお子さんを三人連れた若いママさんだったんだけど、がっかりしてた私に譲ってくれたのよ。

私の感じでは、あの時その家のお父さんが犬を欲しがってたみたいだけど、ママはまだ小さい子供を三人もかかえているから、犬を飼う事に納得してなかったみたい。

だから譲ってくれたのかなと思うのよ。」

(ふーん、やっぱりどこでも家の実権は、奥さんが握っているのかな)
         ・・・院長、無言のうちに、思い巡らす

「それでね、この子は最初から水が嫌いでね。お風呂を怖がってたの。

息子が言ったのよ。『お母さん、この犬、狂犬病みたいに、水を怖がるよ。』って。

それ以来、家でシャンプーはずっとできないの。

でも、頭が良くて、お父さんの車のエンジン音やよく来る友達のエンジン音は、すぐ覚えたの。それ以外の車が入ると、吠えるのよ。」

お母さんに何をしゃべられてるのか知らないまま、レイ君はとろとろ眠っています。

三人で二時間近くブラッシングと毛抜きをして、シャンプーに移りました。

だんだんレイ君の体が、良い香りに包まれることでしょう。
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