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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

マル子の初体験

掃除の時間です。マル子が、モップを動かしながら、話してくれました

「この前の休みですね、市からの健康診断の案内を初めて受け取ったので、私、行ってみることにしたんですよ。だって、5百円でできるらしいので。

私がよく行く病院は、ベテラン看護士がそろった所だから、採血なども失敗がなく、痛くもなく、上手なんです。時々あるでしょう、イテテテ・・・・と思うときが。

それで血圧測ると、上が94、下が56だったんです。

『あなた、血圧低いわね。いつも低いの?』

って、看護士さんが聞いたから、

『わかりません。血圧測るの初めてなので。多分、検査の為、生まれて初めて朝食を抜いたからかもしれません。』

って、答えました。」

「えっ! マル子、君、朝ごはん食べなかったこと、ないの?小学校とか中学校とかで、具合が悪いとか、遅刻しそうだとか、そんな理由で、一回ぐらい朝ごはん食べなかった経験、生まれて今まで一度もないの?」

「いえ、ありません。毎日食べてます。フフ・・・」

「驚いたなあ・・・。たいしたもんだね。」

「それでですね、『胴回りも測ります』って、言われたんです。」

「胴回り? ウエストのことじゃないの?」

「いえ、それが違うんです。ウエストじゃなく、お腹が一番膨れている部分を、測るんです。『ここじゃ、なんだから、あっちの隅に行って測りましょ。』って言われて、広い部屋の隅に連れて行かれて測ったんですが。」

「どこで測っても、一緒なのにね。」

「はい、それから、私、パスタを連れて、ディスカウントショップに行ったんです。(注:パスタとは、猛烈凶暴な咬みつき犬です)

そこの駐車場に、証明書写真の機械があるんですが、ふと気がつくと、撮影する椅子の横に財布が落ちてたんです。

私、あれ!?と思って、キョロキョロしたんですが、周辺には誰もいないので、拾って、どうしようか、お店に届けるのがいいか、警察が良いか、迷ってたんです。中には、キャッシュカードも、免許証もあったんです。落とした人は困ってるだろうと思って。」

「うん、うん」

「そうしたら、真っ青な顔をした女性が走ってきたんですが、その方の顔は、免許証の写真と同じ顔だったので、すぐわかり、お渡ししました。」

「ふーん、それは良かったね。さぞ、喜んだだろうね。それで、お礼は、もらえた?」

私は、ゲスな質問をする自分自身に、(おまえ、そんなつまらない事、聞くなよ)と、心で逡巡したが、結局聞かずにはおれなかった。

「はい、『助かりました!』って、すごく喜んで、嬉しそうでしたよ。・・・ え? いいえ、お礼なんて、もらっていませんよ。」

「そうか、良かったねえ、すぐ、見つかって。そりゃあ、嬉しかったろうねえ・・・。」


以上が秋の初め、マル子の休日。変化に富む出来事と、ドキドキした事件でした。
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