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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

雲仙に行った日

「先生、うちのタマ子がお世話になりました。これね、お土産!」

いつも陽気なマダムKが、子猫のタマ子を迎えに来られました。春分の日からの連休で、旅行に行かれたようです。

「わ! マダム、ありがとうございます! タマ子ちゃんは元気でしたよ。」

「フフフ・・・そう、良かったわ!」

・・・・・・・・・・・

さて、お茶の時間です。

「ところで、マダムKは、どちらに旅行に行かれたのかな?何のお土産いただいたの?」

「はい、えーと、雲仙て書いてますよ。『雲仙豆煎餅』って。」

「へーえ、雲仙か・・・。いいなあ、あそこは静かで、とにかくのんびりできるところだからね。

で、君達は、雲仙行ったことあるの?」

「何度もあります。」

カメ子がそっけなく即答した。

「あの、わたしは、小学校の修学旅行で行きました。」

マル子が話し始める。

「わたし、あの時、雲仙で温泉卵を買いたかったんですよ。でも先生が『ここでは買い物をしてはいかん。』と、言われて、何も買えなかったんです。」

「へーえ、買っちゃいけないの。カメ子の学校は、生徒が悪かったからね。」

「いえ、いえ、小学校のときは大丈夫でした。悪いの中学校でした。

・・・それでお土産は、長崎でカステラを買って帰ったんですが、お店に積まれているのをとってきたら、家に帰ってから、

『あら、賞味期限が短かいね。あんた、上からとったんやろ。下からとらんとだめやないね。』って、親から言われました。

それから、妹にはチャンポンのお土産を買ったんですよ。チャンポンってわかりますか? ガラスでできていて、吹くとペコンポコンっと、音がなるやつですけど。」

「うんうん、わかる。薄いガラス細工のね。」

「はい、割と大き目のチャンポンを買ってきたんですが、妹に『はい、お土産!』って、渡したんです。

そしたら、妹がプーっと一回吹いて、パチンと割れて、それで終わりでした。すぐ壊れました。」

「ハハハ・・・、小学生だからね。適度というか、常識がわからないからね、ハハハ・・・しかたないね。ハハハ・・・」

雲仙・・・その地名一つにも、響きがある。

「雲仙」と聞いた人は、各人それぞれの想い出が、甦るのだ。

一瞬にしてマル子には、二十数年前の想い出が、まぶたに浮かんだ。

そっけなく答えたカメ子には、そっけなく答えてしまう理由となるような想い出が、もしかしたらあるのかもしれない。

いや、もちろん私にも、雲仙には数々の想い出がある。

良い想い出は、パチンと割れないから、いい。
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