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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

シロアリの襲来

「キャッ! 見て見て!」

妻が叫びました。

「え? ぎょっ! あ、あれは、何だ!」

朝食の時間でした。

あわただしくパンをかじり野菜ジュースを流し込み、しかし、沖縄の事件を報じた新聞の一面にだけは目を通して立ち上がりかけた時です。

白い天上を見上げると、黒い点々がいくつもあって、それらがゆっくり動き回っているのです。

「う?・・・」

虫のようですが、目を凝らしても何の虫かよくわかりません。テーブルに立ち上がり、ガムテープをペタペタとくっつけてみました。

「やややっ!・・・こ、これは・・・シロアリかもしれないぞ!」

羽アリのようですが、お腹が茶色っぽいのです。羽は背中で一枚に閉じています。

一大事です!家にシロアリが湧いたのです。天上に十匹前後の羽アリが、うごめいています。

「なんたることか・・・」

確かに古い建物です。27,8年前に、わずか六百万円ほどで建ててもらった安普請です。福岡地震の時、修理をした大工さんが、

「おや、何だ、この家は! 壁に断熱材が入ってないじゃないか、たまげたね・・・」

と、笑っていたくらいです。

たしかにお金はなかったので、格安料金で頼んだのですが、まさか断熱材が使われてないとは知りませんでした。冬になるとえらく寒いなあと思っていたはずです。

しかし、それでも大事な我家です。その家に、シロアリとは!

べたべたべたと、天上中にガムテープをつけてまわり、不法侵入のシロアリを逮捕してまわりますが、しばらくするとまたいつの間にか出現。

絶望の思いで再びテーブルに立ち上がり、ガムテープを駆使してシロアリを貼り付けの刑に処しますが、いたちごっこです。

と、その時です。天上の片隅を見ると、一匹の黒い小さな蜘蛛がじっとたたずんでいるのが見えました。

「ややや、蜘蛛だ蜘蛛だ!シロアリを退治してくれるかも。」

それは足の長い、気持ちの悪いタイプではなく、小さくて、足の短い、可愛いタイプの蜘蛛です。よく家の中をピョンコピョンコ跳ね回りながら動き回っている豆粒くらいのやつです。

「そうだ、そうだ、こんな時のために、お前をいつも、見逃してやってたんだぞ。他の蜘蛛は退治しても、お前だけは家の中を自由にさせてやってたじゃないか。

さあ、今こそ出番だ! 片っ端からシロアリをやっつけるんだ!」

私たちは、固唾を呑んでチビ蜘蛛の動きを見守ります。

黒いチビ蜘蛛のおでこのあたりには、白い一本線。

シロアリが動くと、チビ蜘蛛の目が光ったようです。マシンのような敏捷な動きで追いかけます。シロアリが方向を変えると、蜘蛛もそちらに向き直り、スルスルと静かに追跡します。

「もう少しだ、もう少しで襲いかかるぞ!」

私たちは二人で天上を見上げ、チビ蜘蛛を応援しました。

続く。
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