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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

シロアリの襲来(そのⅡ)

天上でうごめくシロアリに狙いを定めたチビ蜘蛛は、スルスルスルと、近づきます。そしてピタリと止まり、様子を覗います。

「いまだ! 襲いかかれ! 食ってしまえ!」

私たちは拳を振り上げて必死の声援です。

シロアリは、捕食者の追跡に何も気づかないかのように、あっちへウロウロ、こっちへウロウロ。そしてチビ蜘蛛は、スルスルと近づいて・・・。

ところがいつまで見ていても、チビ蜘蛛は一向に襲いかかる様子がありません。チョロチョロ追いかけてはみますが、近くでじっと見ているだけです。

「えー、何だ、お前は。どうして戦わないんだ。ほら、どうした!」

首が痛くなるまで天上を見上げていた私たちは、いたく失望しました。

(なんだ、見掛け倒しじゃないか。こりゃ、だめだ、チビ蜘蛛の弱虫!)

弱虫呼ばわりされて、チビ蜘蛛も迷惑だったかもしれません。

「第一俺は足が八本あるんだ、虫じゃねえぞ!」・・・と、言いたいかもしれません。

仕方がない、餅は餅屋、専門家に頼もう!
私たちは相談の上、シロアリ駆除の業者に頼むことにしました。

以前、野良猫をよくうちに連れてきていたシロアリ業者さんがあったので、そこを探しましたが名前が電話帳にありません。やむを得ず似た名前の所があったのでそこに電話をしたら、どうやら親戚だとのことで、明日行きましょうとのことでした。

そして翌日のお昼頃、軽トラックに乗って、優しそうなおじさんが来てくれました。

「どれですか? アリは捕まえていますか?」

「はい、ここに。これです。」

私は小さなビンに入れた三匹のシロアリを差し出す。

「うーむ、いや、これはシロアリじゃないね。確かに羽は一本に閉じているけど、胴体が長くつながってない。

今は繁殖季節じゃないし、これはただの羽アリだよ、うん。」

「えー、シロアリじゃないんですか、本当ですか、わあ、助かった。シロアリじゃないことを願っていましたが、でも、多分だめだろうなと、諦めてましたから。

ホッとしました。いやいや、ありがとうございます。」

ありがたい診断でした。
床下に大工事が必要になったらどうしようと、心配していたのです。

かくしてシロアリ事件は、真相究明の結果、間違いであることがわかりました。実際、羽アリは二日間出没しただけで、三日目には一匹も姿を現しませんでした。

こうして病院にはまた平和な日々が戻りました。

ただ、その後もチビ蜘蛛は天井をパトロールしているようですが、私は以前のようには彼に敬意を払わなくなりました。
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