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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

ホノルル動物園実習2012

先週は診療の休みを頂いて、今年もホノルル動物園に実習に行かせて頂きました。一部の皆様にはご不便をおかけし、大変失礼致しました。

寒い福岡から飛行機に乗ること7時間、空港に着いたらそこは南の楽園・・・と思ったら空はどんより曇り、気温も低くて汗をかくこともありません。どうやらオアフ島ではこの一週間ほど、ずっと雨模様だったそうです。

さて大きな荷物だけホテルに預けると、動物園に直行です。

昼少し前に着いたのですが、小さな建物で年配者から若者まで二十人ほどのボランティア達が集まって獣医から熱心に講義を聞いているところでした。

椅子は空いておらず、通路に立って私も真剣に耳を傾けますが、あいかわらず我が英語は上達しておらず、話しについていけない情けなさ。やむを得ず、ボランティアたちの顔を眺め回しておりました。

彼らはそっくりかえったり、肘をついたり、ガムを噛んだりしながら思い思いの格好で話しに聞き入り、いかにもアメリカらしい奔放さです。

活発な質問の後、グループに分かれて散会、私たちはドクター・ベンについて病院棟へ戻ります。

元気な彼の顔を見ながら、一年たつのは早いものだとしみじみ思いました。

さて、病院の南側、入院舎の一部屋に、十数kgほどの体重の黒いテナガザルのつがいが収容されていました。よく見ると手の平ほどしかない小さな生まれたばかりの子ザルが、お母さんの胸にしがみついています。

親子三匹でここで暮らしているようです。

「この前まで、このサルたちは外の展示スペースに飼育されていたんだよ。ところがこのオスのほうがね、その展示場所から大ジャンプして、堀を飛び越えて脱走してね、
それで今はとりあえず、ここに収容しているんだ。」

後でその展示場所に行って見ました。円形のコンクリート壁に囲まれたその内側低い位置に堀があります。幅は4mほどでしょうか。サルの嫌いな水を一杯湛えています。そしてその内側に島が造られ樹木が植えられていました。

「まさか、ジャンプできるとは。」

「どうやってまた捕まえたんですか?」

「飼育係たちがネットを持って周りを囲み、じわじわ包囲を狭めたら、自分でまた島に跳んで帰ったのさ。」

どうやらテナガザルの実力は、動物園側の想定をはるかに上回っていたようです。

どんな業界でもそうですが、想定を超える出来事が起こることを常に考えて、対策をたてておかないといけないのは当然のことのようですね。

敷地の東側では、新しく広々とした象の運動場が、ようやく出来上がっていました。予算がつかないとかで、4,5年越しで工事を進めていたのです。

しかしついに完成、この広さなら、象が走り回って運動会でも出来そうです。今は雌が二頭しか居ませんが、将来は雄を入れる予定とのことです。

象をこの新しい運動場に移すためには、古い象舎から通路に導いて毎日少しづつ散歩の距離を伸ばしたのだそうです。

少し行っては、引き返す。次の日、また少し先へ行っては引き返す。何日も何日もそれを根気よく繰り返しながら、象の警戒心を和らげ、新しい運動場の直前まで来ても、その日はやっぱり引き返し、そうやってそろりそろりと引越しをさせたのでした。

野生動物の生活環境を用意するというのは、努力も知恵も必要です。
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