手加減に失敗して
お茶の時間でした。
急に初夏めいてきたかと思ったら、また寒くなってきたある日の夕方、マル子が話し始めます。
「先生、昨日、突然大雨が降っていたでしょう。私ですね、台所に立って洗い物をしていたんですよ。
そうしたら、視野の端っこに何か動くものを感じたから見たら、ゴキブリだったんです。
それが、よろよろとして、私の足元に近づいてきたんです。
私、じっと見ていたんですが、殺虫スプレーどこだっけ?とか、ハエ叩きを取って来ようかとか、思いながらまだ見ていたんです。」
「えっ、ちょっと、マル子の家にハエ叩きがまだあるの? 懐かしいなあ・・・、もう最近は、そんなもの、無いかと思ってた。
昔はよく家の中にハエが入ってきたから、ハエ取り紙ぶら下げたり、ハエ叩きで追いかけたことあったけどねえ。」
「いえ、まだ売ってますよ。あのですね、最近のは、柄のとこに、ピンセットと塵取りがセットになって収納できるタイプがあるんです。
それでですね、私、ハエ叩きを取りに行っても間に合うかなどうかなと、考えていたんです。
で、決心してちょっと先4mほど離れた所に取に行って戻ったらまた居たんです。
それで、バチンと。
私、本当はそれで叩いて失神だけさせるつもりだったんです。失神だけさせて、外に逃がしてやろうかと思って。」
「はあ? マル子はゴキブリを逃がすの? わざわざ、逃がしてあげるの?」
「ええ、まあ。だって、外にいるゴキブリは野生で悪さをしないから。」
「ふーん・・・、そういうもんかねえ。僕ならどこで見ても、やっつけたくなるけどねえ。」
「可哀そうだからそのつもりだったんですが、でも、叩いたのを見たら内臓が出てるのでちょっとだめでした。」
「ふーん・・・」
会話はそこで途切れた。
話を聞いてた三人は、内臓が出たゴキブリを想像しながら、黙ってお茶を飲んでいる。
湯のみから、湯気があがり、その湯のみを両手で抱えながら、動かなくなったゴキブリを思い浮かべた。
それにしても今後は、マル子の手加減には、気をつけなければならないと思った。
急に初夏めいてきたかと思ったら、また寒くなってきたある日の夕方、マル子が話し始めます。
「先生、昨日、突然大雨が降っていたでしょう。私ですね、台所に立って洗い物をしていたんですよ。
そうしたら、視野の端っこに何か動くものを感じたから見たら、ゴキブリだったんです。
それが、よろよろとして、私の足元に近づいてきたんです。
私、じっと見ていたんですが、殺虫スプレーどこだっけ?とか、ハエ叩きを取って来ようかとか、思いながらまだ見ていたんです。」
「えっ、ちょっと、マル子の家にハエ叩きがまだあるの? 懐かしいなあ・・・、もう最近は、そんなもの、無いかと思ってた。
昔はよく家の中にハエが入ってきたから、ハエ取り紙ぶら下げたり、ハエ叩きで追いかけたことあったけどねえ。」
「いえ、まだ売ってますよ。あのですね、最近のは、柄のとこに、ピンセットと塵取りがセットになって収納できるタイプがあるんです。
それでですね、私、ハエ叩きを取りに行っても間に合うかなどうかなと、考えていたんです。
で、決心してちょっと先4mほど離れた所に取に行って戻ったらまた居たんです。
それで、バチンと。
私、本当はそれで叩いて失神だけさせるつもりだったんです。失神だけさせて、外に逃がしてやろうかと思って。」
「はあ? マル子はゴキブリを逃がすの? わざわざ、逃がしてあげるの?」
「ええ、まあ。だって、外にいるゴキブリは野生で悪さをしないから。」
「ふーん・・・、そういうもんかねえ。僕ならどこで見ても、やっつけたくなるけどねえ。」
「可哀そうだからそのつもりだったんですが、でも、叩いたのを見たら内臓が出てるのでちょっとだめでした。」
「ふーん・・・」
会話はそこで途切れた。
話を聞いてた三人は、内臓が出たゴキブリを想像しながら、黙ってお茶を飲んでいる。
湯のみから、湯気があがり、その湯のみを両手で抱えながら、動かなくなったゴキブリを思い浮かべた。
それにしても今後は、マル子の手加減には、気をつけなければならないと思った。
2013-04-19 15:00
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