菖蒲園のカメ
「あっ、カメだ! 大きなカメだなあ、お前さん、どこに行くんだ!?」
梅雨空のもと、ある日の午後、菖蒲の花を見に舞鶴公園へ出かけた時のことです。
舞鶴公園は福岡城の跡地です。街に残された広大な緑地で、隣接して大濠公園もあります。
菖蒲園はすでに花の盛りが少し過ぎていましたが、咲き残った青や白の菖蒲をめあてに、数人の写真家がカメラを構えて気に入った角度を探していました。
隣りの池には薄黄色の蓮の花も水面に浮かんでいましたが、雨雲の垂れ込めた池の上は、山中の沼のような静けさです。
その池のそばを歩いて城跡に上る坂道にさしかかった時でした。甲羅の長さが20cmを越える大きなミドリガメが、ゆっくり坂道を横切っているところに出くわしました。
「お前さん、いったいどこから出て来たんだ? あっちの池まで行きたいのか!?」
土の上を歩いているカメにはめったにお目にかかれないので、私としてはカメの行く先に興味を惹かれましたが、カメは返事をしてくれません。
のっそり、のっそり、池のほうへ歩を進めます。
「やっぱり、カメは遅いなあ・・・」
もし私の子供時代なら、すごい宝物を見つけたように興奮してカメを抱いて持って帰ったでしょうが、最近の子供ならはたして興味をもつでしょうか。
「おい、悪い奴らに捕まらないよう、早くいくんだぜ。」
そういえば先日カメ子が言ってました。
「わたしですね、子供の頃、カメを飼ってたんです。時々近くの川に持って行って、水槽は川で洗ってました。
その間、カメが逃げないように河原の石で囲いを作ってその中にカメを入れておくんですが、
『あっ、カメが逃げよる!』
言われて慌ててバシャバシャ追いかけてつ捕まえてました。
水槽を川で洗うなんて、今なら文句が出るでしょうね、フフフ・・・」
偶然一匹のカメを見かけても、それを見つめている人たち百人百様、子供時代の自分なりのカメとの思い出が、密かに心に甦っているのでしょう。
梅雨空のもと、ある日の午後、菖蒲の花を見に舞鶴公園へ出かけた時のことです。
舞鶴公園は福岡城の跡地です。街に残された広大な緑地で、隣接して大濠公園もあります。
菖蒲園はすでに花の盛りが少し過ぎていましたが、咲き残った青や白の菖蒲をめあてに、数人の写真家がカメラを構えて気に入った角度を探していました。
隣りの池には薄黄色の蓮の花も水面に浮かんでいましたが、雨雲の垂れ込めた池の上は、山中の沼のような静けさです。
その池のそばを歩いて城跡に上る坂道にさしかかった時でした。甲羅の長さが20cmを越える大きなミドリガメが、ゆっくり坂道を横切っているところに出くわしました。
「お前さん、いったいどこから出て来たんだ? あっちの池まで行きたいのか!?」
土の上を歩いているカメにはめったにお目にかかれないので、私としてはカメの行く先に興味を惹かれましたが、カメは返事をしてくれません。
のっそり、のっそり、池のほうへ歩を進めます。
「やっぱり、カメは遅いなあ・・・」
もし私の子供時代なら、すごい宝物を見つけたように興奮してカメを抱いて持って帰ったでしょうが、最近の子供ならはたして興味をもつでしょうか。
「おい、悪い奴らに捕まらないよう、早くいくんだぜ。」
そういえば先日カメ子が言ってました。
「わたしですね、子供の頃、カメを飼ってたんです。時々近くの川に持って行って、水槽は川で洗ってました。
その間、カメが逃げないように河原の石で囲いを作ってその中にカメを入れておくんですが、
『あっ、カメが逃げよる!』
言われて慌ててバシャバシャ追いかけてつ捕まえてました。
水槽を川で洗うなんて、今なら文句が出るでしょうね、フフフ・・・」
偶然一匹のカメを見かけても、それを見つめている人たち百人百様、子供時代の自分なりのカメとの思い出が、密かに心に甦っているのでしょう。