バナナ四分の一切れ
「バナナなら、Sスーパーより、Hスーパーの方が美味しいですよ。」
お茶の時間です。マル子が粉末スープを溶かしてスプーンでかき混ぜながら、そう言いました。
「ふーん、美味しいなら、台湾バナナかな?」
そうです。年配の人間は、みんな台湾バナナが上等だと、刷り込まれているのです。
子どもの頃食ったバナナは、どうしてあんなに美味しかったのでしょう。
しかしマル子には、台湾のブランドは通用しない。
「いいえ、Hスーパーは、種類が多くて、ハロチャンスイートとか、極撰バナナとか、5種類くらいの置いているんです。」
「ふーん、五種類ねえ・・・。そんなにいろんな種類がいるもんかねえ・・・」
「そんなに高くないし、・・・うちは、五本160円くらいのを、買っています。それを家族みんなで食べます。」
「あれ、五本じゃ、人数と合わないじゃない?」
「みんな食べるとは限らないし、毎朝一本をとって、それを四等分に切って、置いとくんです。それが朝ごはんです。五日分です。」
「ええっ? 一本の四分の一? たったそれだけ?」
「でもお父さんは、二切れ食べます。他に、キウイとか、リンゴとかも切って置いとくから・・・」
「果物ばかりだね。それじゃあ、チンパンジーの食事と一緒だぞ。ハハハ・・・」
「いえ、チンパンジーなら、もっといろんな種類の果物が用意されますが、うちはそんなにないから、フフフ・・・」
もしマル子の家族に聞かれたら、叱られそうな話だったが、それにしても、変な朝食である。
でも果物ばっかりというのも、オシャレな朝ごはんかもしれない。
それに対して、我が家は食パンにプレーンヨーグルトとブロッコリーが多いから、・・・ゾウガメの食事に近いかしら?