確定申告
「先生、またいつもの皮膚病が出ました。 今度はすぐに薬を使い始めたのですが、最初は広がったけど、今は少し落ち着きました。・・・あっ、先生、今日も塗り薬は少し多めに下さい。なかなか、仕事の休みがとれないから。」
夜、暗くなった頃、猫のクリちゃんのを連れて、マダムがおいでになりました。
「おや、また皮膚病が出ましたか! いつもマダムはお忙しそうですね。」
「ヘヘヘ・・・はい、実は税理士事務所に勤めているので、今は忙しくて・・。」
「あらまあ、それだったら一年中で今が一番忙しいでしょう。」
「フフフ・・・はい、皆さん、今頃になってどっさり領収書を持ってきたりするから、大変です。
『だって、税理士さんに毎月頼んだら、高いでしょ。』って皆さんすぐ言われるんですが、私は『一年に一回のほうが高いとよ! 税金のことを考えたら、毎月にした方が結局安くつくの!』って、言うんですけどね。フフフ・・・。」
この前もね、確定申告で来られた方が、夫婦ゲンカを始めたの。
『こんなに、所得が計算されて、あなたが飲みに行った時、領収書を持ってこないからよ。』
『そげんことはできんよ。接待したお客さんの聞いてる前で、いちいち領収書下さいと言えるか!』
『だって、あなたが領収書をちゃんともらって来てたら、こんなに税金を払わなくても済むでしょうが。』
『できん、できん』
それで私は、ケンカが落ち着くまで、しばらく黙って待ってましたよ、フフフフ・・・
それにしてもクリちゃん、あなたはいつも年末調整とか、確定申告とか、忙しくなった頃に限って皮膚病になるねえ、・・・どうしてかしらねえ、困ったものねえホホホホ・・・」
マダムはにっこりそう言われると、クリちゃんの入った大きなキャリーを抱えて、帰って行かれました。
申告期限の3月15日まであと二週間、どうやらそれまでマダムは忙しくて休む暇がなさそうです。