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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

愛犬の弔問に二十人

「サンタがお世話になりました! ありがとうございました。」

マダムUがおいでになりました。ひと月ほど前に14歳で亡くなった中型犬のサンタ君のことで寄ってくださったのです。サンタ君は子犬の頃マダムが動物管理センターから引き取りました。マダムはその頃、ある学校で食堂の調理に関わっておられました。学校の生徒さんたちにも、「サンタ、サンタ」と可愛がってもらいました。

それから14年です。一年ほど前に発作を起こし、心臓がかなり悪いことがわかり毎日薬を飲んでいました。それからも何度か倒れましたが、そのたびにニトロを飲ませて、なんとか回復していたのです。しかし、やっと暖かくなり始めた三月の上旬に、仕事から帰ったマダムを待っていたように、腕の中に倒れて息を引き取りました。

(何度も危ないところを助かったし、この二、三日は食欲も落ちていたし、覚悟をしていたから、仕方がないわ・・・)

マダムは十分世話が出来たことに、悔いはありませんでした。

ところが、それから意外なことが分かったのです。サンタ君が、思ってた以上に顔が広くて、たくさんの人に愛されていたということです。

「二十人くらいの人から、声をかけてもらったんですよ、『サンタ君、どうしたんですか?』『サンタ君、最近いないですね』って。本当にたくさんの人が、私の知らないところで『サンタ、サンタ』って、可愛がってくれてたみたいで、びっくりしました。・・・」

マダムはご自分でも驚いたのでしょう。自分の所の犬がこんなにいろんな人につながりを持っていたなんて。

「昔ですね、近所に、不登校になっていた小学校の一年生がいたんです。その子がサンタと仲良くなって、よく遊んでいたんです。サンタと遊びながら、だんだんまた学校に行けるようになったんです。今、その方は大工さんになって働いているんですよ。

彼が仕事から帰った時、『サンタ君が死んだらしいよ。』って母親から聞いたら、彼は涙ぐんでくれたそうです。」

マダムはそんな話をしてくださいました。

心臓病の老犬でも、生きている限り、地上でいろんな役割を果たしている。

改めてしみじみと、思わされました。

 

 


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