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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

もう一度畑に行こう!

「タローが三日間下痢して、それにしょんべんばっかりすると!」

ムッシュHが中型犬のタローを、農作業用軽トラックに載せて連れて来られました。

「三日間、下痢が続いているんですか?」

「うん、何も喰わんごとなっとる。様子見よったけど、こらいかん思うて連れて来た。」

診察台に上げてもらったタロー君、なるほど立っているのもしんどいようで、腹這いになって伏せてしまいました。 

「吐き戻しはありますか?」

「いんや、吐いてはおらんばってん・・・」

八度三分で熱はありません。後ろ足から採血をさせてもらうと、白血球が少し上昇しており、肝臓酵素の一部も増加しています。

しかし最も顕著なのは、胆嚢系と腎臓系の値でした。どちらも非常に高くなっています。

「そうね、そんなら、注射でもしてくれんね。」 

「あの、ムッシュ、これはすごく悪そうですから、連れて帰るより入院させた方が良さそうですよ。今日、明日が危ないかもしれません。注射するぐらいじゃちょっと、もう・・・」

「うん、そんなら入院させよう。」

感染症の可能性もあったので隔離室に入れました。ケージに入ったタロー君はやはりそうとうきつそうで、されるがままです。24時間点滴が始まりました 。

「どうね、今日は連れて帰れるね?」

翌日面会に来たムッシュが、そうスタッフに尋ねています。 

「いえ、ムッシュ、昨日お話ししたように、三日以上はしっかり治療を続けた方がいいですよ。」 

「タロー、タロー、・・・・・」 

作業帽の下の日焼けした顔をにっこりさせて、ムッシュは短時間で面会を済ませると、車に乗り込まれました。

また翌日来られたムッシュが言われました。

「もう連れて帰ろうかと思うけど。うちで看取ってやろうかと思うが。」 

「いえ、ムッシュ、数字は少しづつ改善して、本人の気分も少し楽そうですから、このままうまくいけば、死なないで済みますから、もう少し治療したらどうでしょうか?」 

「じゃあ、置いとこうかね。」 

タローの回復はゆっくりでしたが治療には反応してくれるようでした。どうだろうか、嘔吐が始まりはしないか?と、気をもみながらの点滴であり、実際一度は嘔吐をしたのですが、それでも時間がたつにつれ気のせいでしょうか、何となく目に輝きが見えてきました。

結局一週間の入院になりました。130を超えていた尿素窒素の値も 正常に戻る事が出来ました。フードも小分けして与えれば、美味しそうに食べてくれます。

「今日は、連れて帰るよ!」

「そうですね、ムッシュ。そろそろ一度、家で様子を見て戴きましょうか。 タロー君、帰ろうかね。」

来た時と違って、自分でしっぽを振って歩きながら、タローは帰って行きます。それにしても愛犬の一週間の入院は、ムッシュにとっては予定外の出来事になったのかもしれません。

もう11歳をすぎたタロー君ですが、どうぞ順調に回復して、またムッシュと一緒に畑に行けるようになってほしいものです。

 


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