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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

よく刺さるんです

「この前、健康診断に行ったんですよ、それで採血の時、私の腕の針痕を見て、看護士さんが『何、これ?』っていぶかしそうな眼を向けたんです。それで私、『あ、いえ、違います。これは献血です。献血の痕です。こっちが採血の所で、こっちが戻すところ、成分献血ですから。針が太いんですよ。』って、言いました。アハハ、薬物使用と疑っているような顔をしたからですね。フフフ・・・」

カメ子はよく献血に行く。自分の血で社会に貢献できるし、ついでに無料で血液検査結果も出て来るので、一挙両得。年に数回はしている様だから、なかなか偉い。

「でもですね、この肘の裏側の黒い痕、これは家具の杉針が刺さったところなんです。私、一か月くらい全然気がつかなくて、でも、いつまでもこのキズ治らないなあ?って、思ってたんですが、ある時血が出てたから思い切ってゴリゴリとほじくってみたんです。

そしたら、小さな木の棘がポロリと出て来て、あらあ、これが刺さってたのか!って、初めて気がつきました。」

「わあ、びっくり。・・・でも、犬の毛も、良く刺さるよね。」

マル子が答える。

「家に帰っても、腕とか、膝にもチクチク何かあるのよね。そこが赤く丸くなってて。よく目を凝らしてみると、細い白い毛が刺さってたりして。」

「そうそう、私もこの前、膝にミミズみたいにニョロニョロって赤い蛇行した線が見えたんです。何だろうこれ?って睨んだら、端っこに一本毛が立ってたからそれを引っぱったら、ズルズルって赤い線に沿って長めの毛が抜けたんです。」

「うわあ、そうなの!私は足の裏なんかも、よく刺さりますよ。トリミングの痕に何だか足がおかしいと思って、家に帰って座って足の裏をよく見ると、犬の毛が刺さっているんです。じっくり探さないと、すぐは見つからないんですけどね。 目にもよく入るかなあ。翌朝起きて、目がむず痒いので鏡を見たら,フワフワ飛んでいきそうなほどの細い長い毛が入っているんです。それを、ズルズルって引っ張り出すんですよ。」

「うんうん、あるある、そんな時、目が気持ちいいんですよね。ズルズルって、異物が目から引き出される感覚が爽快なんですよね。フフフ・・・」

体に刺さる毛で、二人の会話は盛り上がっている。トリミングをする者にしかわかりにくい話しかもしれない。

私には犬の毛などめったに刺さらない。だから彼女たちが、日常的に陰でそんな苦労をしているとは知らなかった。

ただでさえ人生に悩み多きカメ子とマル子だが、職場のストレスで心に刺さったトゲの他に、さらに犬の毛まで抜かなければいけないとは。

次の誕生日には、せめてコロコロをプレゼントしてあげよう。


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