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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

不用品の買い取り訪問

午前中の診療を終え、午後すぐ猫の避妊手術にとりかかりました。

まだ若い元気なサビ色の子で、大きな問題もなく予定通り終了し、昼休みです。

(よし、とりあえず安心。お昼にしよう・・・。)

「ツルルルル・・・、ツルルルル・・・・・」

自宅に戻り、昼食を戴こうとした時、電話がなりました。

 「もしもし・・・」

「こんにちわ、ご主人様でいらっしゃいますか?こちらはリサイクル買取センターです。このたびご近所を回り、不用品を買い取らせていただきます。なんでも結構です。衣類、食器の一点からでも構いませんから、ご協力いただけないでしょうか?」

(ははあ、・・・また、来たかな、これは今問題の、貴金属買い叩きだな・・・)

一年近く前でしょうか、同じような口上で電話がかかり、来てもらったのです。そうしたら衣類や古いものには目もくれず、「宝石はないか? ネックレスはないか?」としきりに聞いて、結局何も持って行かなかったのでした。

「うーん、不用品ねえ・・・。あいにく今、うちにある不用品と言えば、僕ぐらいだと言われてるんだけどねえ、妻から・・・。」

私がそう言うと、電話の向こうで若者が、明るい声でこう答えた。

「あ、そうなんですか、いえ、一点からでも構いませんので、ぜひご協力をお願いします。」

「う・・・・・」

・・・不用品として協力できるどうか、難しい選択を迫られた。


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ハエぐらい・・・

雨の多い八月です。今日も一日降っています。

昼も一時を過ぎた頃、一頭のおとなしいチワワのカットを終えたところで、お昼ご飯にすることにしました。

「あー、お腹が空いた! さあ、お昼にしよう!・・・あら、私、買って来たパンをどこに置いたかしら?」

カメ子が私物置きをがさごそ捜していましたが、見つかりません。

「キャッ、もしかしたら私、着替えた時、二階に置いたままかも!」

あわてて二階に駆け上がるカメ子。

「へへへ、あったわ。でも、暑い二階に置いたままで、大丈夫だったかな?」

くんくんと臭いを嗅ぎながら、戻ってきます。

「まあ、いいわ。大丈夫なことにしよう。イタダキマス!」

と、テーブルに座り、カメ子がにっこりパンの袋を開けた時です。

「キャッ、ビニール袋にコバエが入ってる!」

なんと、買って来たパンを二個入れていたビニール袋の中を、コバエがブンブン動き回っていたのです。

「ギャー!やだあ・・・、どうしよう・・・」

出勤前に、せっかく買ってきたドーナッツとホットサンドです。カメ子は数秒間じっと考えていました。

「でも、いいわ。パンはそれぞれ別の小袋に包まれてるから、大丈夫だと思うわ。」

みんなが注目しているので理屈を説明していますが、何のことはない。食い気に衛生観念が勝てなかっただけです。

何でもなかったような顔をして、ホットサンドを頬張り始めます。

と、そばで見ていた猫娘が、彼女を励ますように言いました。

「大丈夫ですよ、カメ子さん、それくらい。私なんか、この前、赤ん坊に離乳食を食べさせていたんですが、スプーンを差し出して、ちょっと目をそらした時に、スプーンの先にハエが止まってたんですよ。あっ!と思ったら、もう飛んで行ったんですが、私、一瞬、どうしようか迷ったんですが、短い時間だからいいやと思って、食べさせました。」

一同は、こんどはじっと猫娘の顔を見つめたが、それからは何もなかったように、各自の食事を続けたのです。


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旅先で眼鏡が!

それは久しぶりの山口出張でした。某大学での獣医講習会出席のためです。土曜日の仕事を終えて夜の7時に福岡を出て、山口についた時は時間も回っていました。

とりあえず近所の食堂を見つけて夕食を取り、安宿にもどって汗を流し横になってテレビを見ていた時です。

ふと体の向きを変えた瞬間に、バチッと音がしました。

(エッ、何だ!?)

それは、はずして横に置いていた眼鏡を肘で押しつぶした音でした。

(まさか! うそっ!)

いいえ、本当でした。耳にかける細い「つる」の部分が、折りたたみのネジの部分でボッキリ折れていたのです。

頭が真っ白になりました。私の裸眼は0.01以下、眼鏡がなければ明日の講習会で何も見えないし、第一車も運転できず、どうして福岡まで帰れるでしょうか?

(落ち着け、落ち着くんだ。どうしたら、この緊急事態を乗り越えられるか、考えろ!)

頭の半分は、パニックで、残りの半分で、何か名案を探そうとしていました。

地方の温泉街です。時計を取り上げて睨むと、夜も11時を回っていました。

(そうだ、ホテルのフロントで助けてもらおう。瞬間接着剤でも、貸してくれるかもしれない。)

私はあわてて服を着ると、エレベーターのボタンを押すのももどかしく、一階におりました。

「すみません、眼鏡が壊れて・・・」

見えない床に気をつけながらエレベーターを飛び出すと、私はそう言おうと思って、フロントへ駆け寄りました。

と、そこで見た時の衝撃! なんと、カウンターに白いシャッターが下り、ホテルのフロントが閉店しているのです。

(そんな! フロントに・・・、フロントにシャッターが下りるなんて、有り!?)

信じられませんでした。誰も居なくなっていたのです。

(やっぱり、安い所に泊ったから・・・こんな時に限って・・・)

小学校の四年生から眼鏡をかけていますが、生まれて初めて眼鏡を壊したのが、よりによって旅先で深夜とは。

(そうだ、明日一番で、眼鏡屋に行こう!)

しかし、こんな温泉街で、速攻で眼鏡を作ってくれるところがあるとは、期待できません。やっぱり、なんとかしなければなりません。

(サバイバルだ、考えろ! 考えろ!)

と、その時です。ホテルの玄関ドアの向こうの方に、コンビニの灯が見えました。

(やった!よし、コンビニに行けば、何かあるかもしれない。)

私は夜の街へ飛び出すと、壊れた眼鏡を目に乗せて片手で支えながら、車に気をつけて右左を見ながら道路を渡りました。

「すみません、瞬間接着剤はありますか!?」

祈るようにして聞くと、店長らしいおじさんがニコニコやってきて言いました。

「はい、有りますよ。どうぞ、こちらです。ところで何に使われますか?」

「眼鏡が壊れたんです。ほら、ここ!」

私が壊れた眼鏡を見せると、店長が気の毒そうな顔をしてこう言いました。

「あ、いや、眼鏡には着きませんよ。僕も前にやってみたんですが、だめでした。ほら、ここ!」

そう言われて、店長のしている眼鏡の左のつるを見ると、一か所透明テープでぐるぐる巻きにしていました。

「ね、だから、僕はセロテープで巻いています。テープのほうがいいですよ。」

にっこり笑う店長。ガックリくる私。

「はあ、・・・そうなんですか・・・」

なんという運命の巡りあわせ。店長の眼鏡も壊れたままだったのです。しかも、店長の眼鏡は太くて、真ん中あたりが折れているので、修理しやすいはずです。私のは、折りたたむ金具の所なので、添え木を当ててテーピングというわけにはいきません。

(運命の分かれ道だ、良く、考えろ! どうするか、よく考えろ!)

私は静かに自分に言い聞かせ、そして決断しました。他に方法はありません。

「じゃあ、瞬間接着剤と、テープと、両方下さい。」

とにかく、これで乗り切るしかない。なんとかしないと。

私は900円を払うと、その二つを大事に抱えて、ひっそりとしたホテルに戻ります。

(とにかくやってみよう。接着剤で、つかないか・・・)

どうやら私は、人の言葉を簡単には信じない性格のようです。とにかく、眼鏡のつるを折れ口に合わせ、接着の予行演習をして、つながり方を確かめます。そして、いよいよ本番、緊張に震えながら接着剤を塗りました。

(着け!着いてくれ!)

祈りながら一分ほど、じっとじっと押さえ続けました。そして、そっと指を離すと・・・なんと、つるは折れていたところでしっかり固定されたのです。

やった!やったぞ! 着いたぞ!・・・でも、本当かな? 押してみようか、いやいや、とにかくかけてみよう。

眼鏡をかけてみましたが、大丈夫です。ちょっと傾いていますが、気にならない程度です。

良かった! これでなんとか明日は乗り切れる。福岡にも帰れる。

私がホッとして、眠りについたのは二時近くになっていました。

・・・・・・・

「ということでね、週末は出張先で大変だったんだよ。ほら、ここが折れている部分。」

月曜日のお茶の時間です。まだ傾いた眼鏡をかけたまま、私は騒動のてん末をスタッフに話しました。

「今日も、明日も、昼休みは手術が入っているから、だから水曜日に眼鏡屋さんに行って来るよ。それまで壊れないように、そっとかけとかないと。」

「でも、どうして眼鏡を壊したんですか?}

と、お菓子を食べながらマル子が聞いた時です。すかさず、カメ子が冷やかにこう言い放ちます。

「ふん、先生のことだから、どうせ、いやらしいテレビでも見てて、うっかり、しくじったんでしょ!?」

「・・・うっ、・・・むむむ・・・、」

どうしてカメ子は、感が鋭いんでしょう・・・


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