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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

ハエぐらい・・・

雨の多い八月です。今日も一日降っています。

昼も一時を過ぎた頃、一頭のおとなしいチワワのカットを終えたところで、お昼ご飯にすることにしました。

「あー、お腹が空いた! さあ、お昼にしよう!・・・あら、私、買って来たパンをどこに置いたかしら?」

カメ子が私物置きをがさごそ捜していましたが、見つかりません。

「キャッ、もしかしたら私、着替えた時、二階に置いたままかも!」

あわてて二階に駆け上がるカメ子。

「へへへ、あったわ。でも、暑い二階に置いたままで、大丈夫だったかな?」

くんくんと臭いを嗅ぎながら、戻ってきます。

「まあ、いいわ。大丈夫なことにしよう。イタダキマス!」

と、テーブルに座り、カメ子がにっこりパンの袋を開けた時です。

「キャッ、ビニール袋にコバエが入ってる!」

なんと、買って来たパンを二個入れていたビニール袋の中を、コバエがブンブン動き回っていたのです。

「ギャー!やだあ・・・、どうしよう・・・」

出勤前に、せっかく買ってきたドーナッツとホットサンドです。カメ子は数秒間じっと考えていました。

「でも、いいわ。パンはそれぞれ別の小袋に包まれてるから、大丈夫だと思うわ。」

みんなが注目しているので理屈を説明していますが、何のことはない。食い気に衛生観念が勝てなかっただけです。

何でもなかったような顔をして、ホットサンドを頬張り始めます。

と、そばで見ていた猫娘が、彼女を励ますように言いました。

「大丈夫ですよ、カメ子さん、それくらい。私なんか、この前、赤ん坊に離乳食を食べさせていたんですが、スプーンを差し出して、ちょっと目をそらした時に、スプーンの先にハエが止まってたんですよ。あっ!と思ったら、もう飛んで行ったんですが、私、一瞬、どうしようか迷ったんですが、短い時間だからいいやと思って、食べさせました。」

一同は、こんどはじっと猫娘の顔を見つめたが、それからは何もなかったように、各自の食事を続けたのです。


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