喉の奥のつかえ
(ング、・・・ング・・・)
どうも喉の調子がおかしいわ。ヒリヒリする感じで、何かがつかえたみたい。
数日前から違和感を感じていたカメ子が、ゲホゲホと、咳をしてみた時です。
なんと、少量の血液が混じっていました。カメ子の顔から、スーッと血の気が引きます。
(こ! これは・・・ 癌だわ! 癌に違いない!)
クラクラした頭でそう考えると、早く病院に行って調べてもらおうと、決心しました。
翌日です。仕事が終わるのを待ちかねたように職場を飛び出すと、耳鼻科に飛び込みます。
「先生! 助けてください!」
話しを聞いたドクターは、どれどれと、口の中を覗きます。
「うーん、どこも腫れてないし、炎症もないね。でも念のため、もうちょっと奥の喉頭部まで確認出来るように、スコープを入れてみようか。何かあったら、いけないからね。」
「はい、お願いします。」
ドクターはカメ子の鼻に点鼻麻酔をすると、するすると鼻の穴から内視鏡を入れる。
ブヒブヒ・・・・
カメ子の小さな鼻が広げられ、スコープが喉の奥を映し出す。
「わわっ、先生、これは、これは何ですか!?」
モニターに映し出されたゴツゴツに、カメ子が驚く。
「あ、これ? これは普通だよ。誰にでもあるよ。えーと、・・・うーん、やっぱり何もないね。もしかしたら、食物を嚥下する時傷つけていて、それが治りかけているのかもしれないけど・・・」
「何も見つからない。」・・・それで十分です。
「あっ! げげっ、これは!」なんてドクターから言われたらどうしようと、ドキドキでした。 「何もないね」という言葉に、カメ子のどーんと重たい胸の不安がすーっと晴れました。
・・・・・
「そういうわけで、昨日は病院に行ってきたんですよ。まだ、違和感は残っていますが、でも、安心しました。」
カメ子が嬉しそうに報告する。
「ふーん、そうだったの、でも、良かったね。」
一緒に働いているのに、私はカメ子の不安に気がつかずにいて、悪かったなあと思ったが、とりあえず癌などでなくて良かった。
でも、まだ、何だか喉につかえがあるらしい。
多分、カメ子の喉の奥に張り付いているのは、くすぶっている院長への不満に違いない。