苦手なもの三つ
「猫のワクチンをお願いします!」
「はい、マダムこんにちわ! 三回目のワクチンですね。」
「はい、そうでーす。」
時々外に出かけるミーちゃんを連れて、マダムがお出でになりました。ミーちゃんが外に出るので、白血病ワクチンも、エイズワクチンもうちました。特にエイズは初年度は三回も必要です。
「おや、マダム、注射の時は顔をそむけていますね。そんなに痛くはありませんよ。」
「いいえ、先生、私は尖った刃物とやくざと蛇は、苦手なんです。」
「ハハハ・・、そう言えば、前回もそうおっしゃってましたね。でも、イケメンの男なら大丈夫ですか?」
「いいえ、先生、私だめなんです。私三回も結婚に失敗して、DVにもあってもう、男性恐怖症です。だから、何かの会合で、男性のそばにいると、もう、恐くてだめなんです。」
「うーむ、トラウマがあるんですね。」
「はい、緊張してしまいます。」
マダムは微笑みながら、診察室を出て行かれた。どうやら、私は男の内には入ってないらしい。
それにしても、いろんな人生を歩いて来られた方が、過ぎた日々は胸に沈めて、それぞれ大事なペットを抱いて、今日も動物病院においでになる。