気の進まない骨折の手術
しばらく前の事、前足を痛がるとプードルの子犬がやってきました。レントゲンを撮ると、骨折です。前腕の横骨折、トイ犬種は骨が細いので、椅子からちょんと飛び降りただけで、ポッキリ折れるのです。
痛いでしょうに、それでもやんちゃざかりの子犬ですから、少しもじっとしていません。
「トイ種の骨折治療は、順調にいかないことも多いので、専門医で相談された方がいいですよ。」
そうお話しして、副木固定だけして、お返しいたしました。
ところがそれから一週間もたたないうちに、また別のプードルで、同じ場所の骨折の子が来院しました。
レントゲン像もそっくり。
私はその方にも、トイ犬種は、骨折手術の経過が順調とは限らないので、専門医をお勧めしました。
けれどその方は、昔から当院に時々かかられている方で、よその病院はあまり知らず、ここで良いと言われる。
「いえ、本当に骨折は、その後が必ずしも順調にいくとは限らないので、どうぞ専門医でなさってください。」と、再度お勧めしました。
ご年配のご主人は、困ったような顔で、うんとは言ってくださらない。
「いや、うまく固定が出来ないと、治らないかもしれないし、うまくいっても安静に出来ないと金属が折れたり、骨が弱くなって骨融解を起こしたり、本当にトラブルも多いのです。最悪の場合、もし断脚でもなったら大変ですよ。・・・え、それでもいい?その時は諦めるから・・・、ううむ、困ったなあ・・・」
気が進まなかったのですが、やむを得ず引き受けて、そしてなんとか無事予定通り手術は終了しました。一週間ほど入院して、自宅治療に切り替えていますが、家の中で自由にしていて、どこまで安静に出来ているか、ちょっと不安です。
手術後やっと三週間ほど経過して、抜糸もできました。今の所、御夫妻で通院して戴きながら、喜んで下さっています。
獣医としては、どうぞ順調でありますようにと、恐る恐る祈るばかりです。