「おい、元気しとるか?」

「おお、久し振り、うん、なんとかね。」

珍しく同期の一人の友人から電話がありました。彼は現在ある大学で、獣医学科の教授をしています。
学生時代は遊んで悪い事ばかりしていた奴だと思うのですが、もともと優秀だからでしょう、悔しいけれど今や偉い先生です。

「いやね、実はちょっと聞きたい事があるんだけどね・・・」

教授室からの電話に何事かと思ったのですが、話を聞くとどうやら今年のある卒業生のことでした。
動物病院に就職したけれど、その職場が合わなくて辞めたい・・・と言う相談を受けたらしいのです。

それで、
「どうなんだろう?最近の動物病院の仕事状況とかは・・・」
という電話でした。

私は自分の感じていることを電話で話しました。そして伝えながら、一人の卒業生の悩みの為に骨を折っているこの友人のことを、嬉しく思いました。

学問の府における忙しい仕事の合間に、すでに卒業してしまった一人の若者を気にかけている。と、そんなことを思っていたときに、今更のようにふと、気づいたのです。

人は自分の仕事だけきちんとできたら一人前かと私は思っていましたが、どうやらそれは間違いだったかも知れません。

自分の仕事をちゃんと片付けるのは、それは当たり前ですが、その合間に、誰それかのために駆け回って骨を折ったり頭を下げたりできて、その時はじめて一人前になっているというのが、正しいのかも知れません。

こんなこと、気づくのがだいぶ遅すぎましたかね?