SSブログ

聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

張り紙

「もうすぐお昼だね、今日はどこからとろうか?」

十二時近くになり、お昼の相談が始まりました。
普段はスタッフみんな弁当を持参していますが、週に一回だけ、土曜日だけは出前を取る日にしているようです。

(フフフ・・・お昼は何を食べようかな?)

これが彼女達の最大の関心事です。

「うーん、じゃあ今日は、ツルさん食堂(仮名)にしようか!?」

「あ、ツルさんですか、あそこ、お店やめたみたいですよ。」

研修生のタマちゃんが突然そう言った。

「え! うそ! 本当なの?」

スタッフ達に衝撃が走る。だって、良くお世話になったお店です。

「あの、この前通りかかったたら、張り紙がしてたんです。もうお店をたたむような事を書いていましたよ。」

(悪い事言ったかしら?)と、どぎまぎするような目で、タマちゃんが補足する。

「えー、本当!? 無くなっちゃうの?」

マル子もカメ子も意気消沈、がっかり顔です。

いつもモヤシラーメンやら、チキンライスやら、ドライカレーやら、美味しいものを頼んでいたからです。

「出前を頼む時の店が、減っちゃったね。」

「そうよね、どうしてやめたのかしら・・・」

いつも出前に運んでくれたオジサンの顔を思い出しながら、ちょっぴり心配もします。
心なしか、彼女達にいつもの元気がなくなったようです。

・・・後日の事、

「先生、張り紙読んできましたよ。」

カメ子がそう言いました。

「『37年間お世話になりましたが、体調不良のため年末を持って閉めさせていただきます』というような事を、書いていました。」

「そうか、37年間か、長い間していたんだね。」

何歳の頃ご主人が自分のお店を開いたのかわかりませんが、37年間は十分長い時間かと思いました。
いろんな事があったんだろうな、話を聞いてみたかったなと残念でした。

人は永遠に生きるわけでもないし、永遠に今の仕事を続けるわけでもありません。
誰にでも必ず、閉じる日、終わりの日が来るのです。

私の動物病院も、あるいは世界中のどの人にも・・・。

その日が来るまで、神様から与えられた自分の課題に精一杯向かうだけです。
トップへ戻る
nice!(0) 

nice! 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。