「いやあ、私は以前は、猫嫌いだったんですけどねえ・・・」

白髪頭を掻きながらムッシュKが、昔を思い出しつつ、笑顔で話してくれる。

ムッシュは自動車修理や販売などをされている社長さんです。

「もともとはね、私は鳥を飼うのが趣味だったんですよ。小鳥をね。ほら、メジロを飼ったりする人がいたでしょ、昔は。

たくさん飼って、こまめに世話してね。

専用の小鳥小屋も作ってたんですよ。それで近所の猫なんかが忍び寄ってくるでしょ、こっそり。

それを見つけては、『こらっ! 何してるっ!』って、ほうきを振り回して、野良猫を追い払ってたんですよ。

猫を目の敵にしてね。

ところがね、ある時弱った猫が迷い込んできてね。なんだか可哀想だから、助けてやったんですよ。

食べ物をやったりしているうちに居ついてね、それから猫好きになっちゃって、ヘヘヘ・・・。

今はね、車庫に猫が出入りできるように、通り口も作ってあげてますよ。

え?小鳥ですか? いえ、もう、飼っていません。猫だけ。」

当院に買いに来たキャットフードを抱えて帰りながら、ムッシュはそう教えてくださった。

最近のムッシュの趣味は、弱ってやせ細った野良猫や、母猫とはぐれた子猫を保護して養ってあげることだそうです。

自宅では、お気に入りのクロちゃんを家に上げて一緒に暮らしています。

廃車された車も一台、工場の隅に置かれ、これは猫の隠れ家にされているようです。

すっかり猫派になったムッシュ。猫の話しを始めると、表情が緩み、目が細くなって話しが終わりません。