先日久し振りに、猫娘が顔を見せてくれた。
彼女は昨年秋に退職して、美味しい物づくりの新しい道を歩み始めている。

「やあ、久し振り。元気そうだね。」

「はい、先生も。あの、今日は甚五郎の耳を診てもらいに来ました。」

そう言って愛犬のシーズーを診察台に上げた。

「どれどれ、うん、ちょっとだけ赤いかな?まあ、それほどひどくなってないけど・・・。」

耳を掃除しながら、ちらりと猫娘の顔を覗く。
彼女も懐かしそうに診察室を眺めている。

「先生、猫娘から、ケーキを焼いたとかで、頂きましたよ。」

カメ子の報告を聞き、猫娘に御礼を言う。

「あれ、それはありがとう。まあ、真面目にやってるみたいだから、安心したぞ。」

「えー、そんなに心配されなくても、わたしぐらい真面目な人は少ないんですから。」

「ハハハ、またおいでよ、いつでもおいで。」

さて、お茶の時間、猫娘が帰ってからみんなでケーキを頂く事にした。

「どれどれ、おお、まともな焼け方をしてるな。でも、何だろう?パンかな?」

「先生、これはフルーツケーキじゃないでしょうか。」

「うん、そうか、フルーツケーキか。」

「何か、入ってますね。」

と、マル子。

「うん、この赤茶色の皮みたいなのは、何かな?」

「何でしょうね・・・」

みんなしばらく黙って味わいながら、食べる。

「うん、あまり甘くないから、これは食べやすい。僕でももう一切れ食べられそうだ。これはさつま芋かな?」

「ええ、お芋でしょうかね・・・」

「おいっしいですね。」

グルメのタマエも味わいながら食べていた。

見かけはフルーツケーキっぽかったが、小さくサイコロにきったさつま芋が入った、美味しいケーキだった。

「今日は、ケーキをありがとう。お芋のケーキも珍しいね。美味しかったよ。」

後で御礼のメールを送ると、返事が返ってきた。

「久し振りのノアはすごく懐かしくて、やっぱりいいなあと、思ってしまいました。
私の心配するとこ、おかしいです。真面目にしか生きれないんですよー。

それとケーキの感想ありがとうございます。でも、アレ・・・栗です・・・。」
--------