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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

しもやけ

「どうして私の足は、今だにしもやけができるんだろう?」

マル子が検査室で流しの前に立ち、洗い物をしながらぶつぶつ言っています。

「へえ、マル子はまだしもやけができるの? しもやけって、だいたい子供ができるものだよ。」

「ううう・・・、そうなんですか。でも、私、病院に来るとですね、足が痒くなるんですよ。」

マル子は水道を止め、足先を見つめながら、片足でサンダルを脱ぐとつま先を曲げ伸ばししている。なるほど、指の付近が少し赤い。

「病院に来ると痒くなる。そりゃあ、いかん。きっと、真面目に仕事をしてないからだな。血が巡らないんだ。」

「あちゃ! そうでしたか、私、もっと駆け回らないといけませんかね。」

「ハハハ・・まともなもん、食ってるか? ビタミン不足してないか?EとかCとか。」

「ビタミンですねえ・・・、正月に映画を観に行った時も、しもやけが痒くなって、片足靴を脱いでコートを掛けた下でボリボリ掻いてたんです。トホホ・・・」

いつもは気の強いマル子が珍しく弱音を吐いている。相当痒いんだろう。
私も中学の頃までしもやけで悩まされた。いつも熟し柿のように左手の皮膚がただれて出血までしていたから、マル子の辛さがわからないでもない。

「しもやけって、どんな感じですか?わたしほとんど出来た事がないから、よくわからないんですけど。」

そばにいたカメ子が、マル子の足先をしげしげ覗きこみながら横から聞く。

「しもやけはね、そうだなあ、冬中同じ所に蚊が刺すような、痛痒さがあるんだよ。」

「へえ! わあ、嫌だなあ!」

カメ子が顔をしかめる。

(ふん、カメ子の場合は、いつも頭の中がしもやけみたいなものだからな。)

私は黙ったまま、昨日来たメール整理を続けるのでした。
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