タワシエレジー
(・・・おや、これは何の毛だろう?)
猫舎で入院ケージを掃除していた時です。
ステンレスのスノコの下に、短い茶色の毛が、パラパラと十本前後落ちています。
(おかしいなあ、ここはスタッフが掃除して、消毒薬もスプレーしていたはずだけど・・・)
私は首をかしげながらそこを覗き込みました。スノコをめくって、毛をよく観察します。
(えらく太いなあ・・・、毛じゃないみたい。長さがみんな揃って、硬くて・・・、あっ! なんだ、これはタワシの毛が抜けたやつじゃないか。)
使い古してくたびれたタワシが、どうやらぽろぽろ毛が抜けだしたようです。それが、落ちていたんです。
(タワシ、よく頑張ったなあ。毛が抜けてきて、お互いみすぼらしくなったが、いいさ。よく働いたんだからな。)
流しのタワシにそう語りかけた次の日でした。
私が診察室で綿棒を作っていると、ぺ子がそばを通り過ぎながら、マル子に言いました。
「あのさ、猫舎のタワシ、もう毛が抜けだしたから、捨てるね。」
「あっ、そうですね、もう駄目でしょうね。」
捨てられていくタワシを、目で追う私。
後にはスタッフの明るい笑い声だけが診察室に響いていました。
猫舎で入院ケージを掃除していた時です。
ステンレスのスノコの下に、短い茶色の毛が、パラパラと十本前後落ちています。
(おかしいなあ、ここはスタッフが掃除して、消毒薬もスプレーしていたはずだけど・・・)
私は首をかしげながらそこを覗き込みました。スノコをめくって、毛をよく観察します。
(えらく太いなあ・・・、毛じゃないみたい。長さがみんな揃って、硬くて・・・、あっ! なんだ、これはタワシの毛が抜けたやつじゃないか。)
使い古してくたびれたタワシが、どうやらぽろぽろ毛が抜けだしたようです。それが、落ちていたんです。
(タワシ、よく頑張ったなあ。毛が抜けてきて、お互いみすぼらしくなったが、いいさ。よく働いたんだからな。)
流しのタワシにそう語りかけた次の日でした。
私が診察室で綿棒を作っていると、ぺ子がそばを通り過ぎながら、マル子に言いました。
「あのさ、猫舎のタワシ、もう毛が抜けだしたから、捨てるね。」
「あっ、そうですね、もう駄目でしょうね。」
捨てられていくタワシを、目で追う私。
後にはスタッフの明るい笑い声だけが診察室に響いていました。