SSブログ

聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

タワシエレジー

(・・・おや、これは何の毛だろう?)

猫舎で入院ケージを掃除していた時です。
ステンレスのスノコの下に、短い茶色の毛が、パラパラと十本前後落ちています。

(おかしいなあ、ここはスタッフが掃除して、消毒薬もスプレーしていたはずだけど・・・)

私は首をかしげながらそこを覗き込みました。スノコをめくって、毛をよく観察します。

(えらく太いなあ・・・、毛じゃないみたい。長さがみんな揃って、硬くて・・・、あっ! なんだ、これはタワシの毛が抜けたやつじゃないか。)

使い古してくたびれたタワシが、どうやらぽろぽろ毛が抜けだしたようです。それが、落ちていたんです。

(タワシ、よく頑張ったなあ。毛が抜けてきて、お互いみすぼらしくなったが、いいさ。よく働いたんだからな。)

流しのタワシにそう語りかけた次の日でした。

私が診察室で綿棒を作っていると、ぺ子がそばを通り過ぎながら、マル子に言いました。

「あのさ、猫舎のタワシ、もう毛が抜けだしたから、捨てるね。」

「あっ、そうですね、もう駄目でしょうね。」

捨てられていくタワシを、目で追う私。

後にはスタッフの明るい笑い声だけが診察室に響いていました。
トップへ戻る
nice!(0)  トラックバック(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。