まだまだ、生かされている限り
「先生、右の胸にしこりがあるんですけど、これ、何でしょうか?」
ダックスのメリーちゃんを連れてムッシュ&マダムKが最初においでになったのは、7年ほど前のことでした。
その頃すでに13歳。
「もう1cmほどになってますね。大きいですから、切りましょうか。」
右胸の乳腺を三つ取って、検査結果は悪性でした。
御夫妻は心配されましたが、幸い再発もないまま2年が過ぎた春、今度はリンパ腫という重い病気にかかりました。
(あら、まあ、またどうして・・・)
御夫妻は降って湧いたような驚きを乗り越えながら検査を進め、大学病院などと連絡を取りながら毎週抗がん剤治療を繰り返し24回、その年のクリスマスには一応治療終了となります。
「すごいね。頑張ったね!」
15歳の誕生日を元気に迎えることができました。ご夫妻にとっては、大切なメリーちゃんの健康を取り戻せて笑顔が広がります。
そしてまた2年後、次は神経障害、突発性前庭障害類似の症状で寝込みますが、まもなく回復します。
「良かった、良かった!」
さすがに17歳の頃は、後ろ足が少し弱ってきますが、まだまだ散歩に出かけていました。
ところが18歳の春、ある日突然のひどい神経症状です。頭を振ったり、上半身をビクビク震わせたり、けいれんを繰り返します。やっとおさまったかと思うと、急に走り出して壁に激突。
何だろう?頭部の疾患か、それとも腫瘍でも発生か?と疑ったのです。病院に抱いて来られた時は立てなくなっており、呼吸も苦しそうになり、
「もう、今度は、だめかも・・・」
御夫妻は(いよいよ、来るべき時が来たか・・・)と、内心覚悟をされました。大きな病気を何度も乗り越え、長生きをしてくれたから・・・、いえいえ、だからといって諦めきれない。やっぱり治ってしっぽを振ってほしいんです。
ところがでした。
「もう、連れて帰ります。家で、世話をして看取ります。」
そう言われて抱いて帰ってから、一生懸命の介護をしていたところ、どんどんメリーちゃんの意識は改善し、また立てるようになったのでした。
ⅯRなどの検査をしないままなので、原因もわかりませんが、一か月たって今や散歩が出来るようになったメリーちゃんです。
「こんなに、元気になったんですよ。それで、診てもらいにきました。それと先生、また、ビタミン剤を下さい。」
「すごいね、メリーちゃん!不死鳥だね。」
「本当に、元気なんですよ。」
マダムがにっこり笑顔で、私たちも嬉しくなりました。ご夫妻にとって、メリーちゃんは力の泉です。