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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

嵐の博多湾

それは台風が接近しているある日、そしてマル子の休日でした。

台風が来ると雨も降りだすし、あまり遊びに行けるところがありません。その日も頑張って、妹と二人、海ノ中道海浜公園まで出かけましたが、案の定休園でした。

「よし、水族館へ入ろう!」

屋根がある水族館だけは、開いていたのです。

「わあ、きれい!」「きゃあ、可愛い!」

水槽の魚を見て言っているのか、ガラスに映った自分を見て言っているのかわかりませんが、一とおり園内を回って外へ出てみると、なんと随分風が強くなっているではありませんか。

目の前のヤシの木がビュンビュン殴りつける風にかしいでは起き上がり、起き上がってはかしいでいます。白いビニール袋がどこからともなく飛んできたと思ったら、あっというまに空の彼方に消え去りました。

「これは大変! 早く帰らなくちゃ!」

マル子たちは、急いで船着き場に走ります。構内に入ると乗船券売り場の窓口に駆け寄ります。と、職員たちが何やら話しています。

「結構、風が強いですよ!」

「うーん、ますます近づいてるなあ」

「どうしようか、欠航しようか?」

そんな職員たちの会話を耳にはさみ、マル子がおずおずと尋ねます。

「・・・あの、船が止まるんですか?」

「・・・・」

と、その時です。

「僕が運転してやるよ!」

年配のおじさんが、そう言ってくれたかと思うと、マル子たちを船に案内しました。

船の出航って、案外アナログな決定なのですね。

台風の接近中です。どんな船だったか聞きませんでしたが、博多湾の中とは言え波はかなり高く、必死で進む船の窓まで波が打ちつけていたそうです。

「むむ、暗くなってきたし、大丈夫かしら?」

ちょっぴり不安もよぎりましたが、かくして無事に船はマリゾンへ到着、どっかりとした大地に足をつけ、マル子の休日は終わったのです。


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