男子校の家庭科授業
「私、以前は学校で家庭科を教えていたんですよ!」
大きな猫、プルートちゃんの治療に通っているマドモアゼルSが、そう話してくれました。
「男子校だったんですけどね、楽しかったですよ。あ、私は裁縫はあまり好きじゃなくて、どちらかといえば料理の方が力が入るんですけどね。
ところが調理実習で、ちょっと油断すると、
『ちょっと、あなた達、それ何?フライパンで何炒めてるの?えっ、こ、これ、ハチじゃない!キャッー!』とか、
ミキサーがウイーンって回っているグループの所に行ったら、なんだか竜のようなものが、うずの中をクルクル回ってたので、よく見たら
『エーッ! これもしかしたら、ムカデでしょ!』とか、
それから、一人の生徒がマッチの箱をポケットに隠しているのを見つけたので、
『ちょっと、君、そんなもの持っててどうするの?危ないから出しなさい。』
『あ、いえ、先生、これ、マッチじゃありません。』
『じゃあ、何よ、何が入ってるの? キャー、なにこれ?ダンゴムシ?何でこんなもの持ってくるの!?』
とかで、信じられます?マッチ箱にダンゴムシがギューギュー詰め。もう、何してるかわからないんですよ!
ハンバーグを作るようこねさせていたら、ミンチを放り投げて、天井にペタペタくっつけて遊ぶし、
『油が撥ねるからね、危ないわよ、変なもの入れたらだめよ!こら、あなた、今何入れたの?えっ?氷?氷を入れたの?』
って、私が鍋を覗き込んだ瞬間にブワアーッて炎が 吹き上がって、私のコンタクトレンズが溶けっちゃったり、
『先生、見て見て! 行くよ! 一、二、三、・・』
『エッ、何なの? あなた達、鍋に何を入れるの? イヤーッ、やめて、ヤモリでしょ、 やめてよ、鍋が、鍋が!…』
って、もう、大変だったんです。まあ、それは、良いんですけどね。
教師はとにかく時間が無くて、持ち帰らないと仕事が終わらないから、自分の時間がもう少し欲しくて、7,8年してやめました。
待遇は今より前の方が、すごく良かったから、みんな『もったいない』って言ってくれたんだけどね、エヘヘヘ・・・」
そんな話を聞いているうちに、プルートちゃんの治療は終わりでした。
「ねね、先生、今日のプルートの履いてきた、このスカート、母が作ったんですよ。昨日の夜、いえ、私じゃないんです、母が作ったんです。短くてセクシーでしょ。フフフ・・・このミニスカートで『先生を悩殺してきなさい』って、母が言ってました、プルートに、ハハハハ・・・・」
「いや、これは、すごい。目がくらみそうだ!ハハハ・・・」
「フフフ・・・・」
優秀なマドモアゼルです。どこに行かれても、充実した日々を送られているでしょう。