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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

添い寝

「またシロに咬みつかれそうになりました。」

ワクチンに連れて来られたときに、マダムTが渋い顔をしてそう言われました。

シロちゃんは14歳をすぎた中型のミックス犬です。子犬の頃からマダムが可愛がってきました。でも、すぐ咬むのです。

「え、またですか?」

「そう、すぐ怒るんです。同居のナナも犠牲者ですけど、私にも咬みつくんです。ちょっとした行動の出会い頭のような時にガブって。

この前も咬んで来たその瞬間、私もカッとなって手を上げたんです。そしたらその上げた手に向かって咬みつこうとするのです。
その時はちょうど右手にテレビのリモコンを持っていたので、それで思い切りひっぱたこうとよっぽど思ったんですけど、リモコンが壊れるといけないので止めましたよ。」

「ハハハ、リモコンは買い換えると一万円はしますからね。」

「そう。それで、そばの雑誌を丸めてどやしましたよ。もう、なんてことでしょうね。

一日四回も散歩に連れて行ってやってるんですよ。餌も上げてねえ。
同居のマルが弱って死にかけた時は、私は二か月その子に添い寝して、看取ってやったんです。

それぐらいしてあげてるのに、平気で咬みついてくるんですよ。」

まったく憤懣やるかたないという表情で、マダムは話された。

「へー、重病の犬に添い寝して二か月・・・ですか!
 すごいですねえ、もし私が死にそうになったら、二か月も添い寝してくれる人、いるかしら?」

私はびっくりした。下の世話、フードの食べさせでも大変なのに、犬に添い寝まで、どうしてしてあげられるのだろう。

「添い寝してくれる人? そりゃあ、いるでしょうよ、但し、普段の心がけ次第ですけどね。」

マダムが笑いながら言う。

犬は、普段の心がけが悪くても世話してもらえるのに、男はそうはいかないらしい。男の方が、分が悪い。

「そうですよ、先生は、病の床に通帳と印鑑としっかり抱いて、それをチラチラ見せながら世話をしてもらうしかないですよ。フフフ・・・」

隣でマル子がひどいことを言う。

「そうそう、それしかないかもねえ、アハハハ・・・・。」

マダムも一緒になって笑う。

「ハ、アハハハ・・・」

私も一緒に笑ったが、・・・内心思った。

いやいや、これは笑い事ではないぞ、
どう考えても、痩せ衰えて死にそうになった私に、二日と添い寝してくれる人はないだろう。

うーむ、
やっぱり、もう少し真面目に教会にでも行っておこうかな!?
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