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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

信じられない!

「へえ、・・・これ、美味しそう!」

ある日、仕事を終え帰宅し、一日の疲れを休めながら、カメ子がテレビを見ていた時でした。

某番組で、チェーン展開しているあるハンバーガーショップが、とっても美味しい「絶品エビバーガー」の紹介をしていた。

じっとその番組を見ていたカメ子は、やはり完全に絶品エビバーガーのとりこになってしまった。

「それに、フライドポテトをサービスしてくれるのが、いいわ!」

なんと、その番組では、お店に行って、絶品エビガーガーを注文した時、一緒に一つのあるキーワードを言ったら、数日間は無料でフライドポテトをくれるというのです。

「絶対、行ってみよう!」

カメ子は固い決心をして、ベッドにもぐりこんだ。

さて、翌日は休みでした。朝から、カメ子の頭は、絶品エビバーガーとフライドポテトのことでいっぱいです。

朝食は少なめにし、お昼を待ちます。12時になり、ドキドキしながらハンバーガーのお店に行きました。
時間が時間ですので、店内はそこそこ混んでいます。
カウンターに並んで、カメ子は心の準備をします。

(誰か、フライドポテトをもらう人は、いるかな?)

それとなく、前の人の注文を聞いていましたが、誰もキーワードを言う人はいません。そうこうしているうちに、ついに自分の順番です。

「いらっしゃいませ! お客様、お持ち帰りですか? 」

「あ、・・いえ、ここで食べます。」

「ご注文をどうぞ!」

「はい、えーと、あの、絶品エビバーガーを一つ・・・」

(ここで、キーワードを言わないといけないんだわ、キーワードは「信じられない!」なのよね。)

カメ子は無料のフライドポテトをゲットするために「信じられない!」と、言おうとしたが、担当の若い青年が、とても真面目そうな顔をした人で、カメ子の返事をじっと待っているから、「信じられない!」の声が言い出せない。

「えーと、絶品エビバーガーと、えーと、コーヒーと、・・・」

カメ子は、キーワードが言い出せない。

(わたしが、信じられない!なんて言ったら、青年は

 「・・・え?何ですか? この人、何言ってるんだろう、変な人だなあ・・・」

って、怪訝な顔をされるかもしれない。キーワードを知らない人だったらどうしよう。)

「お客様、絶品エビバーガーと、コーヒーと?・・・」

「は、はい、それでいいです。」

カメ子はうつむいたまま、そう答えた。

ついにカメ子は、そのいかにも真面目そうな青年の前で「信じられない!」のキーワードを言えなかったのです。

その後、カメ子は絶品エビバーガーとコーヒーだけを持ってションボリ二階に上がり、悔しさに情けなくなりながら、ゆっくり包みを開ける。

(どうしてわたし、キーワードが言えなかったんだろう。あれほど楽しみにしていたのに・・・。)

カメ子は、絶品エビバーガーをゆっくり食べる。プリプリしたエビがたくさん入っていて、予想通り美味しかったが、フライドポテトはゲットできなかった。


カメ子、がっかりするな。

そうやって、人は、自分で自分というものが、分かっていないことに、気がつくんだ。

人間って、複雑なんだよ。

そして、そんな自分が、いとおしくなるんだよ!!
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