久留米研修のおみやげ
「あー、眠かったなあ、研修なんて久しぶりやからなあ。」
「うん、でもオレはしっかり聞いとったぞ、話しは面白かった。」
「そうか、相変わらず真面目やなあ、お前は。ところで、昼飯はどこで食べよう?」
「うーむ、やっぱり久留米やから、ここはラーメンかな!?」
水も滴るいい男、青年二人が、会社の研修で、久留米まで来た時でした。夢タウンでお昼をしようということになりました。
「おっ、こんなとこに子猫がおる! 可愛いなあ、・・・おい、チビさん! どうした? お母さんはいないの?」
二人は、店の前でうろちょろしている子猫を見つけましたが、お腹の虫がグーグーなっているので、目の前の店に入りました。
「いっただきまーす! ・・・ねえねえ、大将、店の前に子猫がいたけど、あれはどこかの猫なの?」
「えっ、子猫? あの、茶色と白のブチでしょ! いやあ、野良猫が勝手に生んだみたいですよ。最近、このあたりで、良く動き回ってますけどねえ。飼い主はいないと思いますよ。
「ふーん・・・・」
腹ごしらえの済んだ二人は、研修会場に戻りますが、ムッシュ青年は、どうも先ほどの子猫の事が気になりました。(あのままで、生きていけるかなあ?・・・)
どうしても気になって仕方ないので、休憩時間を利用して、とうとう先ほどのお店に電話をします。
「あ、すみません、忙しいのに。あの、大将、先ほど子猫の事を聞いた者ですが、子猫はまだいますか?もしいたら、保護しといてくださいませんか。私が帰りにそちらへ寄って、引き取りますから。」
こうしてムッシュ青年と友達は、研修先で見かけた子猫をボール箱に入れて、動物病院に連れて来たのです。
「そうですか、それは随分と優しいお二人ですね。・・・お前さん、拾ってもらって良かったね。めったにこんな幸運はないぞ。うん、ちょっとすすけて汚れてるけど、元気はありそうだ。体重は七百グラムちょっとだな。生後、うーん、二か月くらいかな?
おやおや、シラミがついてるぞ、こりゃ、痒いよなあ、すぐ駆除してやろう、薬を塗ってやるからな!」
診療時間をちょっと過ぎてやってこられた青年たちでしたが、久留米から、その足でまっすぐ、当院に連れて来たようです。話しを聞いて私もスタッフも、ほのぼの嬉しくなりました。
今頃は名前をつけてもらって、青年の部屋で、運動会をしているかもしれません。
「こらこら、会社の書類で爪を研ぐなよ! あっ、また、カーテンなんかに、登っちゃって!」
なんて、叱られながら・・・。