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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

不用品の買い取り訪問

午前中の診療を終え、午後すぐ猫の避妊手術にとりかかりました。

まだ若い元気なサビ色の子で、大きな問題もなく予定通り終了し、昼休みです。

(よし、とりあえず安心。お昼にしよう・・・。)

「ツルルルル・・・、ツルルルル・・・・・」

自宅に戻り、昼食を戴こうとした時、電話がなりました。

 「もしもし・・・」

「こんにちわ、ご主人様でいらっしゃいますか?こちらはリサイクル買取センターです。このたびご近所を回り、不用品を買い取らせていただきます。なんでも結構です。衣類、食器の一点からでも構いませんから、ご協力いただけないでしょうか?」

(ははあ、・・・また、来たかな、これは今問題の、貴金属買い叩きだな・・・)

一年近く前でしょうか、同じような口上で電話がかかり、来てもらったのです。そうしたら衣類や古いものには目もくれず、「宝石はないか? ネックレスはないか?」としきりに聞いて、結局何も持って行かなかったのでした。

「うーん、不用品ねえ・・・。あいにく今、うちにある不用品と言えば、僕ぐらいだと言われてるんだけどねえ、妻から・・・。」

私がそう言うと、電話の向こうで若者が、明るい声でこう答えた。

「あ、そうなんですか、いえ、一点からでも構いませんので、ぜひご協力をお願いします。」

「う・・・・・」

・・・不用品として協力できるどうか、難しい選択を迫られた。


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ハエぐらい・・・

雨の多い八月です。今日も一日降っています。

昼も一時を過ぎた頃、一頭のおとなしいチワワのカットを終えたところで、お昼ご飯にすることにしました。

「あー、お腹が空いた! さあ、お昼にしよう!・・・あら、私、買って来たパンをどこに置いたかしら?」

カメ子が私物置きをがさごそ捜していましたが、見つかりません。

「キャッ、もしかしたら私、着替えた時、二階に置いたままかも!」

あわてて二階に駆け上がるカメ子。

「へへへ、あったわ。でも、暑い二階に置いたままで、大丈夫だったかな?」

くんくんと臭いを嗅ぎながら、戻ってきます。

「まあ、いいわ。大丈夫なことにしよう。イタダキマス!」

と、テーブルに座り、カメ子がにっこりパンの袋を開けた時です。

「キャッ、ビニール袋にコバエが入ってる!」

なんと、買って来たパンを二個入れていたビニール袋の中を、コバエがブンブン動き回っていたのです。

「ギャー!やだあ・・・、どうしよう・・・」

出勤前に、せっかく買ってきたドーナッツとホットサンドです。カメ子は数秒間じっと考えていました。

「でも、いいわ。パンはそれぞれ別の小袋に包まれてるから、大丈夫だと思うわ。」

みんなが注目しているので理屈を説明していますが、何のことはない。食い気に衛生観念が勝てなかっただけです。

何でもなかったような顔をして、ホットサンドを頬張り始めます。

と、そばで見ていた猫娘が、彼女を励ますように言いました。

「大丈夫ですよ、カメ子さん、それくらい。私なんか、この前、赤ん坊に離乳食を食べさせていたんですが、スプーンを差し出して、ちょっと目をそらした時に、スプーンの先にハエが止まってたんですよ。あっ!と思ったら、もう飛んで行ったんですが、私、一瞬、どうしようか迷ったんですが、短い時間だからいいやと思って、食べさせました。」

一同は、こんどはじっと猫娘の顔を見つめたが、それからは何もなかったように、各自の食事を続けたのです。


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旅先で眼鏡が!

それは久しぶりの山口出張でした。某大学での獣医講習会出席のためです。土曜日の仕事を終えて夜の7時に福岡を出て、山口についた時は時間も回っていました。

とりあえず近所の食堂を見つけて夕食を取り、安宿にもどって汗を流し横になってテレビを見ていた時です。

ふと体の向きを変えた瞬間に、バチッと音がしました。

(エッ、何だ!?)

それは、はずして横に置いていた眼鏡を肘で押しつぶした音でした。

(まさか! うそっ!)

いいえ、本当でした。耳にかける細い「つる」の部分が、折りたたみのネジの部分でボッキリ折れていたのです。

頭が真っ白になりました。私の裸眼は0.01以下、眼鏡がなければ明日の講習会で何も見えないし、第一車も運転できず、どうして福岡まで帰れるでしょうか?

(落ち着け、落ち着くんだ。どうしたら、この緊急事態を乗り越えられるか、考えろ!)

頭の半分は、パニックで、残りの半分で、何か名案を探そうとしていました。

地方の温泉街です。時計を取り上げて睨むと、夜も11時を回っていました。

(そうだ、ホテルのフロントで助けてもらおう。瞬間接着剤でも、貸してくれるかもしれない。)

私はあわてて服を着ると、エレベーターのボタンを押すのももどかしく、一階におりました。

「すみません、眼鏡が壊れて・・・」

見えない床に気をつけながらエレベーターを飛び出すと、私はそう言おうと思って、フロントへ駆け寄りました。

と、そこで見た時の衝撃! なんと、カウンターに白いシャッターが下り、ホテルのフロントが閉店しているのです。

(そんな! フロントに・・・、フロントにシャッターが下りるなんて、有り!?)

信じられませんでした。誰も居なくなっていたのです。

(やっぱり、安い所に泊ったから・・・こんな時に限って・・・)

小学校の四年生から眼鏡をかけていますが、生まれて初めて眼鏡を壊したのが、よりによって旅先で深夜とは。

(そうだ、明日一番で、眼鏡屋に行こう!)

しかし、こんな温泉街で、速攻で眼鏡を作ってくれるところがあるとは、期待できません。やっぱり、なんとかしなければなりません。

(サバイバルだ、考えろ! 考えろ!)

と、その時です。ホテルの玄関ドアの向こうの方に、コンビニの灯が見えました。

(やった!よし、コンビニに行けば、何かあるかもしれない。)

私は夜の街へ飛び出すと、壊れた眼鏡を目に乗せて片手で支えながら、車に気をつけて右左を見ながら道路を渡りました。

「すみません、瞬間接着剤はありますか!?」

祈るようにして聞くと、店長らしいおじさんがニコニコやってきて言いました。

「はい、有りますよ。どうぞ、こちらです。ところで何に使われますか?」

「眼鏡が壊れたんです。ほら、ここ!」

私が壊れた眼鏡を見せると、店長が気の毒そうな顔をしてこう言いました。

「あ、いや、眼鏡には着きませんよ。僕も前にやってみたんですが、だめでした。ほら、ここ!」

そう言われて、店長のしている眼鏡の左のつるを見ると、一か所透明テープでぐるぐる巻きにしていました。

「ね、だから、僕はセロテープで巻いています。テープのほうがいいですよ。」

にっこり笑う店長。ガックリくる私。

「はあ、・・・そうなんですか・・・」

なんという運命の巡りあわせ。店長の眼鏡も壊れたままだったのです。しかも、店長の眼鏡は太くて、真ん中あたりが折れているので、修理しやすいはずです。私のは、折りたたむ金具の所なので、添え木を当ててテーピングというわけにはいきません。

(運命の分かれ道だ、良く、考えろ! どうするか、よく考えろ!)

私は静かに自分に言い聞かせ、そして決断しました。他に方法はありません。

「じゃあ、瞬間接着剤と、テープと、両方下さい。」

とにかく、これで乗り切るしかない。なんとかしないと。

私は900円を払うと、その二つを大事に抱えて、ひっそりとしたホテルに戻ります。

(とにかくやってみよう。接着剤で、つかないか・・・)

どうやら私は、人の言葉を簡単には信じない性格のようです。とにかく、眼鏡のつるを折れ口に合わせ、接着の予行演習をして、つながり方を確かめます。そして、いよいよ本番、緊張に震えながら接着剤を塗りました。

(着け!着いてくれ!)

祈りながら一分ほど、じっとじっと押さえ続けました。そして、そっと指を離すと・・・なんと、つるは折れていたところでしっかり固定されたのです。

やった!やったぞ! 着いたぞ!・・・でも、本当かな? 押してみようか、いやいや、とにかくかけてみよう。

眼鏡をかけてみましたが、大丈夫です。ちょっと傾いていますが、気にならない程度です。

良かった! これでなんとか明日は乗り切れる。福岡にも帰れる。

私がホッとして、眠りについたのは二時近くになっていました。

・・・・・・・

「ということでね、週末は出張先で大変だったんだよ。ほら、ここが折れている部分。」

月曜日のお茶の時間です。まだ傾いた眼鏡をかけたまま、私は騒動のてん末をスタッフに話しました。

「今日も、明日も、昼休みは手術が入っているから、だから水曜日に眼鏡屋さんに行って来るよ。それまで壊れないように、そっとかけとかないと。」

「でも、どうして眼鏡を壊したんですか?}

と、お菓子を食べながらマル子が聞いた時です。すかさず、カメ子が冷やかにこう言い放ちます。

「ふん、先生のことだから、どうせ、いやらしいテレビでも見てて、うっかり、しくじったんでしょ!?」

「・・・うっ、・・・むむむ・・・、」

どうしてカメ子は、感が鋭いんでしょう・・・


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屋根裏の積み藁の記憶

「先生、アコちゃんの頬が、また腫れてきたようです。」

ダックスのアコちゃんを連れて、ムッシュ&マダムKがお出でになりました。アコちゃんはダックスの女の子、今年18歳になりました。

「あら、また腫れてしまいましたか、ムムム・・・これで、もう四回目ですね。」

恐らく臼歯の歯根が化膿しているのだと思われますが、高齢のため無理して歯は抜かず、そのたびにいつも薬で対処していました。でもこう何度も繰り返すようでは、今後は化膿菌が悪さすることも心配です。

「どうしましょうか、マダム。やっぱり抜いたほうが良いかもしれませんね。」

「そうですね・・・、うーん、・・・そうですね・・・。」

つかぬ決心を、つけねばならぬ状況と言うのでしょうか。抜歯手術をしても心配、しなくても不安。相談のうえ、已むに已まれぬ思いで、抜歯に踏み切ることになりました。

そして手術の当日、朝食を抜いて連れて来られたアコちゃん。午前中の血液検査を終えて、お昼に手術が始まりましたが、患部は歯根が三本ある大きな臼歯です。一部に化膿があるとは言え、がっちりした歯で、処置はなかなか困難でした。一時間半以上かけて、患部の歯と、それ以外に動揺している歯を4本抜き、処置は終わりました。

さて、夜、まだ回復が十分でないアコちゃんを見まいに来られた時、ムッシュが待合室に出されている里親探し中の黒白のやんちゃな子猫を見ながら言われました。

「僕が子どもの頃、家で猫を飼っていたんですよ。うちの作業場屋根裏に藁があったんですが、僕は時々そこの梯子を登って遊んでいたんです。え? 農家? いえ、違うんです。うちは畳屋だったんですよ、それで、畳床を作るのに、藁が必要だったんです。

で、屋根裏に上がると、飼っている猫がすでにそこに来てたんですが、僕に気がつくと、僕の袖口を咥えて、『こっちへ来い!』って引っ張るんです。

何するのだろう?と思いながら、それで猫について奥へ行くと、猫がそこで座り込んで、出産を始めたんです。びっくりしました。こっちへ来いと、引っ張って、産み出したから・・・。

その後も何度か、授乳中も、しばしば袖口を引っ張って、呼ばれました。なんだか、不思議でしたね・・・。」

高齢のアコちゃんの心配をしながら、そして今日はご自分も検診を受けて来られたそうで、疲れた体と、ほっとする思いと交錯して、ふと子供時代の記憶がよみがえったのでしょうか。

屋根裏で、少年と飼い猫だけの心の通い合うドラマを想像し、映画の一シーンを見せてもらったようでした。

藁の優しい匂いと、その暖かな感触と、そして切なくなるような郷愁が溢れる、ムッシュの想い出話でした。


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サーキットに戻ったぞ!

「こんにちわ!」

「あら、お珍しい!こんにちわ! 」

薬屋さんのムッシュKが久しぶりにお見えになりました。ずっと以前、若い頃は毎日のように顔を出されていましたが、だんだん偉くなられ、普段は会社に座っているのでしょう。もう何年も前から、とんとお顔を拝見できなくなっています。

「先生、どうですか、うちの若い者は、どのくらい顔を出せているでしょうか?」

ははあ・・・どうやら、最近の会社の営業に対しての、動物病院側の印象を探りに来られたようです。というのも、数年前から人員削減というか、一人当たりの担当病院の増数というか、そういう動きが業界にあるからです。営業さんが、ぱたりと顔を出されなくなりました。

「いやあ、一人が病院に伺った時、待ち時間などもありますから、一時間に一軒か二軒しか回れません。そうすると、一人で70軒持ったら、十日に一回しか顔を出せなくなってくる、そういう状況です。社としても、それでいいのか、どうなのか、掴みかねています。世の中の動きとしては、そういう部分があるので、仕方ないのかもしれません。特に若い先生の病院からは、『別に来なくていいけど。必要があればこちらから頼むから、そうそう来なくていいですよ。』と、はっきり言われることもあるんです。ハハハ・・・」

ムッシュは苦笑しながらそう言われました。

「そうですか、若い先生の中には、そんな考えの方もおられるのですね。でも私はやっぱり顔と顔を合わせて、人間関係を感じながら、取引させていただきたいんですけどね。古いタイプですね。」

もし薬屋さんとお会いしないなら、無理にその会社へ電話注文しなくてもいい。もうネットでも何でも、便利なところ、安い所で購入すればいいでしょう。だけど、顔が見えないところは、不安も付きまといます。わからない時も、困った時も、「ありがとう!」とか、「すみません、助かります!」とか言うこともなく、持ちつ持たれつという関係が出来ないままです。

それではつまらない。そう思いますが、さて、薬の手配はこれからどう変わっていくでしょうか?

「先生、私ですね、最近、カートを始めたんですよ、いえ、若い頃も実はしてたんです。ところが昨年、久しぶりに誘われてから、またやりたくなって、とうとう中古で車も買っちゃいました!」

嬉しそうにムッシュが言われた。サーキットカートと言うらしい。

「いえね、中古なら、十万円くらいでも、手に入るんです。基山に小さなコースがあるんですが、あそこは狭いから直線で90kmぐらいしかでません。エンジンですか?125ccです。それで90kmのままカーブに突っ込んでいきます。ヘヘヘ・・・。

でも、車体が小さくて地面すれすれですから、体感速度は200kmですよ!

(スマホに映したエンジン音を唸らせて疾走中の勇姿も、拝見しました。)

昨年秋に車を手に入れてから、コースに預けてますが、え?妻にですか? ハハハ・・・、まだ秘密です。話してません。いやあ、妻と付き合ってた若い頃もやってたから、私がカートが好きなのは知ってるんですが、・・・でも、今は怖くて話せないんです。ハハハ・・・。」

「えっ、悪いなあ、ムッシュは。じゃあ、僕が告げ口しようかな?!・・・ハハハ」

たわいもない話しでしたが、まさかレーシングスピードの世界に趣味を持っていたとは。私の知らなかったムッシュの一面に触れ、改めて人は見かけによらず、いろんな部分を有していることを再認識したのです。

古い付き合いでしたので、ここには記載しませんでしたが、病院と他の薬屋さんとの状況なども、色々お話ししました。はてさて、何かの役に立ってくれるでしょうか?

これからも薬屋さんとは、良い関係でいたいと思います。


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久留米研修のおみやげ

「あー、眠かったなあ、研修なんて久しぶりやからなあ。」

「うん、でもオレはしっかり聞いとったぞ、話しは面白かった。」

「そうか、相変わらず真面目やなあ、お前は。ところで、昼飯はどこで食べよう?」

「うーむ、やっぱり久留米やから、ここはラーメンかな!?」

水も滴るいい男、青年二人が、会社の研修で、久留米まで来た時でした。夢タウンでお昼をしようということになりました。

「おっ、こんなとこに子猫がおる! 可愛いなあ、・・・おい、チビさん! どうした? お母さんはいないの?」

二人は、店の前でうろちょろしている子猫を見つけましたが、お腹の虫がグーグーなっているので、目の前の店に入りました。

「いっただきまーす! ・・・ねえねえ、大将、店の前に子猫がいたけど、あれはどこかの猫なの?」

「えっ、子猫? あの、茶色と白のブチでしょ! いやあ、野良猫が勝手に生んだみたいですよ。最近、このあたりで、良く動き回ってますけどねえ。飼い主はいないと思いますよ。

「ふーん・・・・」

腹ごしらえの済んだ二人は、研修会場に戻りますが、ムッシュ青年は、どうも先ほどの子猫の事が気になりました。(あのままで、生きていけるかなあ?・・・)

どうしても気になって仕方ないので、休憩時間を利用して、とうとう先ほどのお店に電話をします。

「あ、すみません、忙しいのに。あの、大将、先ほど子猫の事を聞いた者ですが、子猫はまだいますか?もしいたら、保護しといてくださいませんか。私が帰りにそちらへ寄って、引き取りますから。」

こうしてムッシュ青年と友達は、研修先で見かけた子猫をボール箱に入れて、動物病院に連れて来たのです。

「そうですか、それは随分と優しいお二人ですね。・・・お前さん、拾ってもらって良かったね。めったにこんな幸運はないぞ。うん、ちょっとすすけて汚れてるけど、元気はありそうだ。体重は七百グラムちょっとだな。生後、うーん、二か月くらいかな?

おやおや、シラミがついてるぞ、こりゃ、痒いよなあ、すぐ駆除してやろう、薬を塗ってやるからな!」

診療時間をちょっと過ぎてやってこられた青年たちでしたが、久留米から、その足でまっすぐ、当院に連れて来たようです。話しを聞いて私もスタッフも、ほのぼの嬉しくなりました。

今頃は名前をつけてもらって、青年の部屋で、運動会をしているかもしれません。

「こらこら、会社の書類で爪を研ぐなよ! あっ、また、カーテンなんかに、登っちゃって!」

なんて、叱られながら・・・。


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風呂場に閉じ込めといたわよ!

お茶の時間です。マル子が話し始めました。 

「昨日ですね、私、お風呂に入ろうとしてたんですよ、そしたら母がすれ違いざまに、言うんです。

『マル子、今、お風呂場に、ゴキブリ二匹閉じ込めといたからね。』

「えっ! 何で私にそれを言うわけ?」

納得いかなかったんですが、それ以上反抗しても仕方がないので,ブツブツ言いながらお風呂に行ったんです。そして中を見たら、いました! 赤っぽい大きなのが。私すぐ風呂を出ると、殺虫剤を取りに行って、シューって吹きかけました。」

「ふーん、マル子はそれなら裸で、殺虫剤を取りに出たの?」

(いえ、これはあくまでも、読者の皆さんの関心事であろうことを思い、一同を代表して質問してみたのですが、マル子は一瞬、口をつぐみ、あきれたような眼で私を見て、「いいえ、まだ服は着ていましたから。」と答えただけで、話しを続けました。)

「それでですね、『一匹しかおらんねえ』って思いながら風呂に浸かったんですが、今朝、風呂場を覗いたらいたんです、今度は真っ黒い大きな奴が。私はすぐハエ叩きを取りに行って、仕留めましたよ。フフフ・・」

今どき、ハエ叩きが活躍している家なんて、早良区でもマル子の家の他に,数軒あるかないかだろう。それにしてもうちの病院は、どうしてお茶の時間にこんな話が多いのでしょうね?


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よく刺さるんです

「この前、健康診断に行ったんですよ、それで採血の時、私の腕の針痕を見て、看護士さんが『何、これ?』っていぶかしそうな眼を向けたんです。それで私、『あ、いえ、違います。これは献血です。献血の痕です。こっちが採血の所で、こっちが戻すところ、成分献血ですから。針が太いんですよ。』って、言いました。アハハ、薬物使用と疑っているような顔をしたからですね。フフフ・・・」

カメ子はよく献血に行く。自分の血で社会に貢献できるし、ついでに無料で血液検査結果も出て来るので、一挙両得。年に数回はしている様だから、なかなか偉い。

「でもですね、この肘の裏側の黒い痕、これは家具の杉針が刺さったところなんです。私、一か月くらい全然気がつかなくて、でも、いつまでもこのキズ治らないなあ?って、思ってたんですが、ある時血が出てたから思い切ってゴリゴリとほじくってみたんです。

そしたら、小さな木の棘がポロリと出て来て、あらあ、これが刺さってたのか!って、初めて気がつきました。」

「わあ、びっくり。・・・でも、犬の毛も、良く刺さるよね。」

マル子が答える。

「家に帰っても、腕とか、膝にもチクチク何かあるのよね。そこが赤く丸くなってて。よく目を凝らしてみると、細い白い毛が刺さってたりして。」

「そうそう、私もこの前、膝にミミズみたいにニョロニョロって赤い蛇行した線が見えたんです。何だろうこれ?って睨んだら、端っこに一本毛が立ってたからそれを引っぱったら、ズルズルって赤い線に沿って長めの毛が抜けたんです。」

「うわあ、そうなの!私は足の裏なんかも、よく刺さりますよ。トリミングの痕に何だか足がおかしいと思って、家に帰って座って足の裏をよく見ると、犬の毛が刺さっているんです。じっくり探さないと、すぐは見つからないんですけどね。 目にもよく入るかなあ。翌朝起きて、目がむず痒いので鏡を見たら,フワフワ飛んでいきそうなほどの細い長い毛が入っているんです。それを、ズルズルって引っ張り出すんですよ。」

「うんうん、あるある、そんな時、目が気持ちいいんですよね。ズルズルって、異物が目から引き出される感覚が爽快なんですよね。フフフ・・・」

体に刺さる毛で、二人の会話は盛り上がっている。トリミングをする者にしかわかりにくい話しかもしれない。

私には犬の毛などめったに刺さらない。だから彼女たちが、日常的に陰でそんな苦労をしているとは知らなかった。

ただでさえ人生に悩み多きカメ子とマル子だが、職場のストレスで心に刺さったトゲの他に、さらに犬の毛まで抜かなければいけないとは。

次の誕生日には、せめてコロコロをプレゼントしてあげよう。


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あなたねえ、覚悟して・・・

「あら、可愛い! ねえねえ、子猫ちゃんがいるよ! おチビちゃん、ママはどうしたの?」

「ミャーァ・・・・・」

「困ったわね、一人ぼっち? お腹空いてるのかな?」

それは小学校で働いているポンタちゃんのお友達が、帰宅途中のことでした。可愛い子猫が一匹迷っていたのです。小さな体を震わせています。彼女は見て見ぬふりをしたいのですが、やっぱりできませんでした。

「どうしよう、私は明日から、楽しみにしていた旅行に出かけるんだけど・・・。うーん、そうだわ!」

彼女は近くの動物病院に頼むことにしました。

「そういうわけで、先生、三日間だけこの子猫を預かってくれませんか? いえ、三日だけでいいんです。旅行から帰ってきたら、自分で育てますから。」

「それはできませんよ。あなたね、簡単に保護してはいけませんよ。保護するなら、覚悟して保護しなさい。こんな小さい子猫、ちゃんと世話しないと死んでしまいますよ。」

(むむむ、なんで、叱られないといけないんだー、)

ちょっとむかつきましたが、そこは大人、にっこり笑って答えました。

「わかりました。自分で面倒見ます。」

ということで、彼女はなんと楽しみにしていた友人との旅行をキャンセルして、ミルクをやり、子猫を育てたそうです。

(ほれー、見ろ! ふん、ちゃんと、育ったぞー!)

と、いう心境でしたよ、あの時は・・・。

それは、もう何年も前の、思い出だそうです。ポンタちゃん先生と寄ってくださった彼女が、話してくださいました。

えらいなあ、旅行までキャンセルして、捨て猫の面倒を見るなんて。それにしても、世の中には厳しい獣医さんもおられるんですね。

私もできれば結婚の前に、そういう話を、聞いとけばよかったなあ・・・。

「あなたねえ、簡単に結婚してはいけませんよ、結婚するなら、覚悟して結婚しなさい!」

え? 全然関係ない!?


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でも、どうしてわかったの?

「仕事から帰ってきたら、うちの猫が口を開けて、涎も垂らして、様子がおかしいんです!」

そう言って連れて来られた黒猫君も、格闘しながら麻酔をかけて、おとなしくなったところで口を観察すると、根っこがすっかり壊死してグラグラになった牙が上あごからポロリと抜けました。

さてはこれが原因か!? あとは様子を観察して戴くことで無事帰り、ようやく一日の仕事を終えて片づいた時は、夜も十時半になっていました。

「先生、昨日どなたかから、頂き物があったんですか?」

着替えを終えて帰ろうとしていた矢先、病院の廊下で突然カメ子が質問します。

(うっ、カメ子、どうして知っているんだ?)

確かに昨日は、アメリカンショートヘアの雌猫を二匹避妊手術した飼い主さんが、ケーキを差し入れしてくれました。でも、カメ子は休日で来ていなかったんです。

「・・う、うん、まあね、・・・モンブランのロールケーキをいただいたんだよ。それで、マル子と研修生とぺ子と僕と、四人で分けて食べたんだよ。」

「それで、残りはどこにあるんですか?」

「う・・、い、いやね、なにしろ生ケーキでさ、賞味期限が昨日一日だったから、残したら悪くなると思って、みんな食べちゃった。い、いやね、僕は言ったんだよ、カメ子に残さなくて良いのかいって、聞いたんだよ。

そしたらマル子がね、『カメ子さんは、賞味期限が切れた物は好きじゃないから、残さなくてもいいでしょ』って言ったんだよ。だからさ、みんな食べちゃった。

いやね、僕は、残したほうが良いよって、言ったんだけどねえ・・・。」

「いいえ、そのような高級なお菓子の時は、一日くらい気にしませんから、私は食べますから。」

「そ、そう・・、じゃあ、この次から、残すようにしとこう・・・。」

その後は無言で廊下を歩き、二人裏口を出ます。中庭からカメ子は門を出た時、私は後姿の彼女に聞きました。

「でもカメ子、どうして君、昨日いただき物があったってわかったの? 」

「洗い場の水切りかごに、洗ったお皿が干してあったんです。あのお皿を使ったなら、何かみんなで食べたなと思って。」

冷ややかにそう返事して、カメ子は夜の闇に消えて行った。

カメ子、恐るべし!である。

 以前も一度、ゴミ箱の中に捨てたみんなで食べた後のお菓子の包み紙を見つけて、翌日問い詰められたことがあったので、今後ゴミを捨てる時は気をつけようと思ったが、水切りかごまでは思いが及ばなかった。

うーむ、カメ子の捜査の鋭さ!尋問の凄味、恐るべし!                              


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