SSブログ

聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

ムッシュ神戸

先日、ケニアで40年近く獣医療活動をされているムッシュ神戸(かんべ)のことに触れましたが、その報告会に参加する機会を得ましたので、興味深かった話題をちょっとご紹介します。

「ケニアまで? うん、直行便はないんだよ、乗り継ぎをして空路で一日半かかるかなあ。
診療所はプレハブのような物を建てているけど、相手は牛とか大型動物だから、みんな往診ですよ。そこから出かけるんです。
家ですか?私の家は別にナイロビに借りています。ハハハ、家には電気水道はありますよ。」

ムッシュは通常、マサイ族の牛の診療、野生動物の保護活動、環境保護(湖や河川)、あるいは蔓延するエイズのために増加している孤児のための施設など各方面で、力を尽くしているようです。

「実は私の父親は童話作家だったので、子供の頃しょっちゅう上野動物園に連れて行ってもらいました。

農業高校を出て、そこから大学に行く人は少なかったけど、父親が一升瓶ぶら下げて、なんとか推薦とれんやろかと先生に頼み込みに行ってくれて、アハハハ・・・、

大学では70年安保闘争に参加してあまり勉強せず、国家試験だけはなんとか頑張って、卒業後は東北で3年間大動物診療したんです。

当時で25万円たまったので、仕事をやめてアフリカに行ってね・・・コンゴでマラリアにかかって嘔吐、下痢、肝炎にもなったしね。でも日本の獣医の免許は通用しないんですよ。

病気でげっそりして、ナイロビにあるうどん屋に行ったら、そこで出会った人が、学費を出してあげるから、ケニアの獣医の免許をとりなさいと言ってくれて、英語が出来ないで苦労したけど、なんとか頑張りました。

マサイ族には貧困という言葉は当てはまらないんですよ。彼らは金は持ってなくても、牛が財産だから。

アフリカは植民地化されて西洋化され、教育を受けるようになった。教育をうけて都会に出てくるけど、しかし就職がなく犯罪や売春に走る、そういう構図があるようです。

今、ケニアには日本から15ほどの支援団体が来てて、学校を建てたり、医療などの援助活動していますよ。

これからしばらくトリパノソーマによる眠り病の研究をして、・・・それが学費を出してやるから、勉強して来いという援助者が現われたから、長崎大でしばらく勉強します。

あと実家には、父親が九十幾つ、母親も八十幾つで健在何なんですが、母は認知症がすすんで介護がいるんだけど、いつも妹にまかせっきりだからね、日本にいる間くらいは、月の半分は実家に戻って介護もする予定なんです。」

六十を少し越えたムッシュの話しとは思えない、エネルギッシュで誠実な生き方を、見た思いでした。

「明日の日曜、あなたの行ってる教会に僕も連れて行ってよ、どこに行こうかと思ってたから。
ケニアで行ってる教会はね、黒人教会で一度に千人くらいで礼拝してて、それでも入りきれないから、三回に分けてやってるんです。

教会と言っても犯罪者も来てるし、売春婦も来てますよ、
アフリカ人は賑やかですね、感情をよく現わして歌うんですよ。欧米人や日本人と違うなあって思います。

この間ね、教会で牧師が話をしていると、聞いてた一人の男が、『悪かったです、この前礼拝中に盗んだ物を返します』なんて手を上げて出てきて謝ったりしていたですよ、ハハハ・・・そんな所ですよ。

とにかくこんな年ですが日本で勉強したら、ツエツエバエによる眠り病の治療に役立つものを何か見つけて、ケニアに帰りたいんですよ。」

「ううむ・・・・」

ムッシュの話は正直でダイナミックです。
私は聞く話一つ一つに引き込まれながら、一挙に心の世界が広がる思いがしました。

皆さんも、もしかしたらケニアに行ってみたくなったでしょ!?
トップへ戻る
nice!(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。