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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

もしもし、はい、わたしでございます

「高齢者の所在不明が、やっぱり続出しているみたいだね。」

掃除の時間、そんな話をするとマル子がニヤリとして話し始めた。

「ヘヘヘ・・・、うちもですね、行方不明というわけじゃないですけど、祖母に成り代わったことがありましたよ。」

「えっ、どういうこと?」

「フフフ、もう十年以上前ですけどね、おばあちゃんが亡くなった時、死亡届を出した後で、葬式代を用意しないといけない事になったんですが、あれは、亡くなったら預金の引き出しができないんですよね。」

「そうそう、気をつけないといけないんだよ、あれは。」

「それでですね、誰だったかな銀行に下ろしに行って、本人でないといけないというので、確認の電話を家にかけてもらったんです。

最初は母がおばあちゃんのふりをするつもりだったんですけど、『何年(なんねん)生まれですか?』って聞かれて、しどろもどろになって、『あ、ちょっと待ってください』と言って、調べながら

『おばあちゃんに代わっててよ、あんた、しい』

『いやあ、あんたし』

と、受話器の前でみんなでドタバタして、結局妹がおばあちゃん役をやったんです。」

「え! 妹さんが?おばあちゃんの声を?よくできたねえ。そうとうかすれ声を出したのかな?」

「ヘヘ・・・、はい、そうしたらまた、『何どし生まれですか?』って聞かれて、妹が答えに詰まって

(なんて?なんて聞かれたと?)

(何どしやったと? おばあちゃん!)

(え? なにどしやったかね、えーとね、えーとね・・・)

と、目配せしながら冷や汗かいたり大騒ぎしながら、本人確認に答えたんですよ。」

ふーん、そういうこともあるんだろう。なにしろ、葬儀の時は全てが慌しく進行していくので大変ですから。

それにしても若い妹さんが急に振られた受話器を握って、いきなりおばあちゃんになりきれるというのは、

やっぱり女性の恐ろしさの片鱗・・・かしら?
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