雛鳥の声
「先生、スズメの子がベランダにいたんです・・・」
残暑厳しい昼の頃、マダムが鳥の雛を箱に入れて持ち込まれた。
私は額に汗をにじませているマダムから箱を受け取ると、その中を覗き込む。
「ん? ・・・マダム、これはスズメじゃありませんよ、なんだろう・・・ムクドリかな?ヒヨドリかな?いずれにしろスズメより二周りほど大きな鳥だと思いますよ。」
「あら、スズメじゃないんですか?」
羽の色はスズメにそっくりですが、まるでサイズが大きすぎます。まだ雛独特の黄色い綿毛を生やしながら、すでにスズメより大きな体です。
「親鳥は来ていませんでしたか?」
「はい、大きめの鳥が来て、ピーピー盛んに鳴いていましたようですが、どこかに行きました。」
「じゃあ、それがお母さんでしょ。でも、この子は羽も短くて巣立ちには早すぎますね。巣から落ちたかも知れません。近くに巣がありませんでしたか?わからない・・・でしょうね?」
「ええ、分かりません。先生、どうしたらいいでしょう。」
「連れて帰ってベランダに置いといたら、お母さんが餌を運んでくれるかもしれませんが・・。」
そうは言ったが、お母さんについてまわって飛行訓練するにはまだちょっと小さすぎるようにも思われた。すぐに猫かカラスにやられそうです。
「先生、わたし出来ません。どうか助けてください。」
「・・・・」
・・・ということで、やむを得ず雛を引き取った。
幸い健康状態は良好で、ピーピーと小さな声で羽を震わせながら餌をねだってくれる。
私たちは練り餌を2時間おきに与えながら、雛鳥を見守った。
処置室のカゴに入れられた孤独な幼鳥。
何の力を持たず、全く無力な小さな雛だが、2時間ごとに大きな口を開けて餌を求めるのを見るたびに、そしてその口に練り餌を差し入れるたびに私たちの心は洗われるような気がしている。
放置されたら死ぬ雛、全く他者に依存するしかない命が、しかし私たちの心に何か新鮮なエネルギーを湧かせてくれる気がするのです。
大きな口を開けて、餌を待つ。
世の中に、強いもの賢いもの有益なものだけが幅を利かせていいわけではないことを、
ピーピーという声の中に謳われている気がした。
残暑厳しい昼の頃、マダムが鳥の雛を箱に入れて持ち込まれた。
私は額に汗をにじませているマダムから箱を受け取ると、その中を覗き込む。
「ん? ・・・マダム、これはスズメじゃありませんよ、なんだろう・・・ムクドリかな?ヒヨドリかな?いずれにしろスズメより二周りほど大きな鳥だと思いますよ。」
「あら、スズメじゃないんですか?」
羽の色はスズメにそっくりですが、まるでサイズが大きすぎます。まだ雛独特の黄色い綿毛を生やしながら、すでにスズメより大きな体です。
「親鳥は来ていませんでしたか?」
「はい、大きめの鳥が来て、ピーピー盛んに鳴いていましたようですが、どこかに行きました。」
「じゃあ、それがお母さんでしょ。でも、この子は羽も短くて巣立ちには早すぎますね。巣から落ちたかも知れません。近くに巣がありませんでしたか?わからない・・・でしょうね?」
「ええ、分かりません。先生、どうしたらいいでしょう。」
「連れて帰ってベランダに置いといたら、お母さんが餌を運んでくれるかもしれませんが・・。」
そうは言ったが、お母さんについてまわって飛行訓練するにはまだちょっと小さすぎるようにも思われた。すぐに猫かカラスにやられそうです。
「先生、わたし出来ません。どうか助けてください。」
「・・・・」
・・・ということで、やむを得ず雛を引き取った。
幸い健康状態は良好で、ピーピーと小さな声で羽を震わせながら餌をねだってくれる。
私たちは練り餌を2時間おきに与えながら、雛鳥を見守った。
処置室のカゴに入れられた孤独な幼鳥。
何の力を持たず、全く無力な小さな雛だが、2時間ごとに大きな口を開けて餌を求めるのを見るたびに、そしてその口に練り餌を差し入れるたびに私たちの心は洗われるような気がしている。
放置されたら死ぬ雛、全く他者に依存するしかない命が、しかし私たちの心に何か新鮮なエネルギーを湧かせてくれる気がするのです。
大きな口を開けて、餌を待つ。
世の中に、強いもの賢いもの有益なものだけが幅を利かせていいわけではないことを、
ピーピーという声の中に謳われている気がした。
2010-08-26 15:00
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