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聖ノア通信 - 当病院の日々の出来事、ペットにまつわる色々な話をつづります -

We Love You So Much

「先生、実はお話しがあるのですが。」

ある日の夕方でした。猫娘が院長室に来ると真面目な顔をしてそう言う。院長室と言っても、消耗品置き場の片隅に机があるだけです。

「うん? 何だろう?」

「あの・・・、実は、退職させてもらおうかと思います。」

むむ、やはりそうか。そもそも猫娘が神妙な顔をしている事自体が、おかしい。
就職以来、彼女が真面目な顔を見せる時は決っている。お昼の出前を何にするか?と考えて、メニュー表を睨んでいる時だけだった。

「お、やめるのか。そうか・・・、やめてどうする?」

「はい、だいぶ迷って考えたのですが、料理関係の勉強をしようかと思います。するのなら、いましかないと思うので。」

(やっぱり食べ物か・・。それなら、考えられるな。)

「そうか、前からスィーツのこと言ってたからね。」

「いえ、お菓子だけじゃなく、料理全般ですけど。」

「そうか・・・」

彼女はよくお菓子やパンを作ってきては、私たちにご馳走してくれた。見栄えも味もなかなかのものでした。
しかし、その道に進むとなると、厳しさは全く別物だろう。

いずれにしろ、病院は寂しくなる。
四年前「猫の手」と思って、来てもらったが、どうしてどうして最近は随分仕事を覚え、先輩たちにも引けをとらなくなった。
いや、どうかしたら、他の者が手間取っている事柄を、一番手際よく処理できる様子を目の当たりにすることもあった。性格は多少悪いかもしれないが、惜しい人材です。

きっと他のスタッフも残念がるだろう。しかし、まだ若いし、一生動物病院にしがみついている必要もないだろうから、一区切りかもしれない。

「わかったよ、ところで具体的には、これからどういう風にするか、方向も決めているか? ・・・そうか、じゃあ、うまくいくといいね。」

というわけで、皆様にも絶大なる支援していただいた猫娘でしたが、残暑厳しい頃、退職が決ったのでした。

とは言え、急に止められても困るので、お願いしてそれから二か月ほど勤務は続けてもらいましたが、あっと言う間にその二か月もたってしまいました。
十月の末でした。

かくして、猫娘が辞めて半月が経過します。
また、そろそろ猫の手が欲しくなったこの頃です。

・・・・・

 「猫娘の行く手に、神様の祝福がありますように!!」
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